金融とITを組み合わせた「フィンテック」は、株式市場でも大きなテーマとして注目を集めている新技術だ。はたしてこの技術はどういう原理で成り立っており、どのような変化をもたらすのか、経営コンサルタントの大前研一氏が解説する。

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 金融とIT(情報技術)を組み合わせた「フィンテック(FinTech)」の普及を促進するための改正銀行法と、ビットコインなどの仮想通貨を規制する改正資金決済法が成立し、金融機関側でも三菱東京UFJ銀行が独自の仮想通貨を開発中と報じられるなど、フィンテックを駆使した新たな金融サービスが身近なものになりつつある。

「フィンテック」はファイナンスとテクノロジーを合わせた造語だが、単に金融分野にITを活用する、という話ではない。その本質は、送金、投資、決済、融資、預金、経理・会計といった従来のファイナンスのあらゆる領域をテクノロジーが再定義し、これまで金融機関がやっていたことを金融機関ではない企業が奪っていく、ということだ。
 これは既存の金融機関にとっては実に恐ろしい話である。すでにアメリカでフィンテックは巨大な産業になって「金融業界におけるウーバー」とも形容されており、たとえば銀行の株式時価総額で世界1位の米ウェルズ・ファーゴのジョン・スタンフ会長兼CEOは「新しいフィンテック企業から学ぶべきものは多い。積極的に協業していく」と述べている。

 具体的にはどのような変化が起きているのか? もう少しわかりやすく説明しよう。たとえば、ビットコインに代表される仮想通貨の基盤技術である「ブロックチェーン」は、すべてのトランザクション(取引)を、それに関係するすべてのコンピューターが記録することで人間の指紋のように複製や偽造ができなくなり、特定の権威なしにトランザクションの正当性を保証するという仕組みである。

 実は、通貨というものはすべて新しい技術とセットだった。石を通貨にしていた時代は丸くする技術が難しかったし、金貨や銀貨や銅貨を同じ大きさと重さと形で大量に作る技術も為政者(中央政府)以外にはなかなか持ち得なかった。それが“信用”を生んできたのである。その後、紙幣になってからは偽札防止技術が進化し、その価値を国家などが保証することで決済のための交換媒体となった。