加谷珪一(経済評論家)

 これまで、怪しげな存在とみなされることが多かったビットコインの普及が急速に進んでいる。一方、ビットコインが8月1日に分裂してしまうのではないかという騒動も発生しており、ビットコイン保有者は気を揉んでいる。

 ビットコインに代表される仮想通貨については、賛否両論があるが、社会の仕組みを変える大きな破壊力を持っているのは確かだ。当面、仮想通貨を保有する気はないという人であっても、その仕組みについて理解しておいて損はない。

 ビットコインはインターネット上に流通する仮想通貨である。既存通貨のように発行元になる国家や中央銀行が存在していないという点が最大の特徴となっている。

 仮想通貨に関して、いわゆる電子マネーと混同している人が多いが、仮想通貨と電子マネーとは根本的に異なる存在である。電子マネーはあくまで既存通貨がベースであり、これを電子的に置き換えたものに過ぎないが、ビットコインはそれ自体が通貨であり、単独で価値を持っている。
 
 国家が一元的に管理していなければ通貨とは呼べないと考える人も少なくないが、これは幻想に過ぎない。多くの人がその価値を認めれば政府が関与しなくても通貨は成立するのだ。

 この話は、近代日本の歴史を振り返ればよく分かる。日本史の教科書を読むと、明治政府は日清戦争の勝利で得た賠償金を元に金本位制を開始したと書いてあるが、厳密に言うとこの記述は正しくない。清は日本に金の支払いができず、当時の覇権国である英国に対して外債を発行。金の価値に相当するポンドを借り入れ、それを日本に支払っている。つまり日本が受け取ったのは金ではなくポンド紙幣である。

 ポンドは英国が保有する金を裏付けとして発行されたものだが、金そのものではない。しかし、当時のポンドは現在の米ドルと同様、グローバルに見てもっとも信用度の高い通貨だった。日本政府はこれを金とみなし、ポンドを担保に日本円を発行したのである。現代に当てはめれば、日本政府はたくさんドル紙幣を持っているので、それを担保に日本円を発行したことと同じになる。