つまり、多くの人が、その通貨に裏付けがあると認識すれば、政府の信用がなくても、その通貨は流通させることができる。日本の通貨制度は、自国政府に対する信用ではなく、ポンド紙幣に対する信用でスタートしたわけだが、だからといって日本の通貨制度は否定されるべきものだろうか。筆者はそうは思わない。結果としてポンドをベースにした通貨制度は発展を遂げ、現在の日本を形作った経緯はあえて説明するまでもないだろう。

 ビットコインは、電子的に管理されるという点では目新しいが、通貨としての基本的な概念は金本位制に近い。コインの発行総量については構造的な上限が決められており、一定量以上の発行は不可能な仕組みになっている。新しくコインを生み出すには、ビットコインの取引を管理するシステムに対してコンピュータの計算能力という「労働力」を提供しなければならず、この作業によって新しい価値が生み出される。

 金本位制の考え方に、経済学でいうところの投下労働価値説をうまくミックスさせた仕組みであり、通貨として非常によくデザインされている。

 こうした特徴を背景に、国家が集中管理しない通貨としてビットコインは全世界に普及した。すべてがネット上で管理されるので運営コストが極めて安く、安価な手数料で世界中とこにでも送金できるという利便性も利用者の増大に拍車をかけた。

 これまでビットコインは、少額の海外送金や投機目的、あるいは経済危機が発生した国からの逃避手段としての保有が多かったが、最近では一般的な決済通貨としての利用も増えている。全世界で利用者が増えてくれば、各国通貨の為替レートを気にすることなく決済できる。旅行などで複数の国を移動している人にとってはなおさらである。
多くの出国者で混雑する成田空港
多くの出国者で混雑する成田空港
 日本政府は、ビットコインはいかがわしい存在としてこれを全否定してしまい、モノとして扱うことをいち早く決定してしまった。しかし、各国がビットコインを通貨として法整備する方向に進んだことから、日本政府も慌てて方針を変更。今年の4月に改正資金決済法が施行され、金融庁の監督の下、ビットコインは準通貨として利用できるようになった。法改正をきっかけに量販店のビックカメラが一部店舗においてビットコイン支払いに対応するなど、事業者も動き始めている。

 もちろん、政府が一元管理しないというビットコインにはデメリットも多い。その典型例が、現在、ネットで話題となっているビットコインの「8月1日危機」である。