現在のビットコインの仕様では、1日に数十万件の取引しか成立させることができない。普及が急速に進んだことから、この仕様では決済処理がパンクすることはほぼ確実な情勢となっている。こうした事態に対応するためには、ビットコインの仕様を変更する必要があるが、ここで問題となるのが、誰がそれを決めるのかという点である。政府が管理する通貨なら、最終的に政府が決断し、うまくいかなかった時の責任も政府が負えばよい。だがビットコインにはそのような仕組みは存在していない。

 ビットコイン取引所など、ビットコインの運営に関わる人たちの間で議論が行われ、多数決に近い形で仕様変更が決定された。だが一部の関係者がこれに納得せず、ビットコインが分裂するリスクが出てきたというのが今回の騒動の発端である。仕様変更の期日が8月1日なので、「8月1日危機」などと呼ばれている。

 最終的には、ビットコインの処理能力が向上し、現在のビットコインはそのまま継続して使えるという、妥当な形で騒動は終結すると思われるが、集中管理者が存在していないだけに何が起こるのかはまったく予測がつかない。

 こうした不透明要素の存在が、決済通貨としての普及を妨げる要因になるのは確かである。だが一方で、政府という政治的な存在に左右されず、通貨というものを民主的に運営するためのコストと見なすこともできる。
主要通貨の紙幣。(左から)米ドル、英ポンド、中国の人民元、日本円、ユーロ(共同)
主要通貨の紙幣。(左から)米ドル、英ポンド、中国の人民元、日本円、ユーロ(共同)
 これまで多くの国家が恣意的に通貨を発行してハイパーインフレを起こしてきた歴史を考えると、どちらが信用できる通貨制度なのかを断定することはなかなか難しいことである。

 わたしたちが理解しておくべきなのは、現代のテクノロジーを使えば、従来は国家レベルでなければ運営できなかった通貨制度もネット上でいとも簡単に構築できてしまうという現実である。

 ビットコインのような仮想通貨が、政府による通貨制度を超越するとは筆者は考えないが、各国の通貨制度の隙間を埋める存在として、普及が進むことは間違いない。ポートフォリオの一部として仮想通貨を組み入れる人は確実に増えてくるはずだ。