人間にとって一番、恐ろしいものは何か。それは驕り高ぶり、油断です。

 今回の自民党圧勝は、自民党批判票の受け皿がほぼ皆無なために起きたことであり、安倍総理がそれを見間違わないように、こころから願っています。

 ただ安倍総理は一方で、油断どころではなくなる現実にも直面すると考えています。

 まず、問題を抱える閣僚もみな当選したために、出直しの組閣、すなわち一部の閣僚を決然と差し替える組閣が難しくなった。2015年1月からの通常国会は決して簡単ではない。消費再増税を延期するための法改正、そしてそれを盛り込んだ新年度予算の年度内成立まではすんなり行くでしょう。しかし2015年4月の統一地方選挙のあとに取り組むことになるだろう安全保障法制の根本改正、集団的自衛権の法制化は簡単ではない。

 なぜなら総選挙でマスメディアは自公が大勝と報じているけれども、その中身は自民党は現有勢力を減らし、公明党は増えているのです。第三次安倍政権の内部で、公明党の影響力は増大します。2014年7月に集団的自衛権の行使容認を閣議決定した時も、公明党の北側副代表によって実際は強すぎる縛りが掛けられました。「日本国民への明白な危険」が実証されない限り、自衛権の一部を発動できないことになりました。

 わたしは閣議決定の翌月に訪米し、アメリカの外交官や軍人と議論したとき「かえって日本はみずからの自衛権に制約を強めた」と指摘され、「アメリカの国益のための集団的自衛権ではない。日本の国益とアジアの自由と民主主義と平和のための集団的自衛権だ」と反論しましたが、アメリカ側の指摘そのものは客観的に事実です。自衛権は本来、国際法によって個別も集団も認められています。閣議決定は、これまでは一種のグレーゾーンでもあったところに明確な制約を作ってしまった。公明党は、法制化でさらにこの制約を実効的にしようとするでしょう。安倍総理は、再登板の真の目的である改憲と拉致被害者の救出のためにも、これに抵抗し、法制化では国際法に沿ったものにしてほしい。
 今こそ、「もはや命も要らぬ、もちろん金も要らぬ、名誉も要らぬ」という幕末の志士の生き方を貫く総理になっていただきたい。それだけが、有権者には見えにくい深い闇のなかの危機を突破できる道です。