古谷経衡(文筆家)

 ここにきて安倍内閣の支持率が急落している。「内閣支持率と政党支持率の合計が50%を割り込むと政権運営の危機水準」とする青木方程式(元自民参院幹事長・青木幹雄氏考案)に照らし合わせれば、わずかにこの50の線は超えているものの、第二次安倍内閣発足当時はゆうにこの数字が100を超え、110などもめずらしくなかったのだから、この衰微傾向は如何ともしがたい。

 とりわけ、安倍内閣への「女性離れ」が進んでいる。日経新聞の世論調査によると、第二次安倍内閣における女性支持率は全期間を通じて一貫して男性のそれより低い状態が続いている。ただでさえ男性支持に偏重していた安倍内閣は、ここにきてさらに加速した「女性離れ」に頭を悩ませている事であろう。

 安倍内閣は、「すべての女性が輝く社会」通称「女性が輝ける社会」を標榜して、積極的な女性政策(社会進出策、雇用均等策など)を打ち出してきたのは周知のとおりである。その意気や良し、安倍内閣発足時の顔ぶれをみるに、女性閣僚や内外での女性問題がこの内閣の足を常に引っ張ってきたのは注目に値する。

 まず劈頭(へきとう)は、2012年末の政権発足当時から「内閣府特命担当大臣」として入閣した稲田朋美である。稲田は国のクールジャパン戦略の基幹となる「クールジャパン推進会議」の議長を務めて取りまとめ役となったが、本人のカルチャー全般に対する無知が世論からの失笑を買った。

 曰く「ゴスロリは十二単が起源」という根拠の全くないデマ・トンデモ説を開陳したかと思えば、どう考えても「単なる緑色のドレス」をゴスロリ・ファッションと称して国際会議の場で披露。「娘から(それはゴスロリではない)と指摘を受けました」として、衣装を変えて再チャレンジする始末。

 国家の文化戦略を司る議長が、実は若者文化やカルチャー全般に対し全くの無知・素人であったというこの事実は、現在第三次安倍内閣にて防衛大臣の重責を担いながら、「日報」問題で揺れる氏の現在を暗示するような予兆であった。

 2016年9月には、陸海空三軍のトップでありながら、民進党の辻元清美議員の追及に対し窮して涙ぐむという一面もあり、イデオロギーの左右を問わず「こんな人が自衛隊のトップにいて本当に日本の防衛は大丈夫なのか」と考えたであろう。さらに2017年6月にはシンガポール安保会議における仏・豪防衛大臣と自らを三羽ガラスにして纏(まと)め上げ「(私たちの共通項は)グッドルッキング(美しい容姿)」と発言、こちらは国際的に失笑を買った。
記者に囲まれながら防衛省に入る稲田朋美氏=2017年7月、東京都新宿区(桐原正道撮影)
記者に囲まれながら防衛省に入る稲田朋美氏=2017年7月、東京都新宿区(桐原正道撮影)
 自民党支持者であろうとなかろうと、また男性であろうと女性であろうと、稲田のこの発言には苦笑しかないであろう。「本当の美人は、それを自称したりしない」という前提はさておき、防衛問題と大臣の容姿には本質的に何の関係もないからだ。「稲田には基礎的な教養がないのではないか―」。普段、概ね自民党支持という有権者からも、こんな声がチラホラと聞こえてくる。「なぜ安倍は稲田のような素人を入閣させ続けるのか。意味が分からない」という声も、また同様に聞こえてくる。稲田はいまや安倍内閣の鬼門となりつつある。