岩渕美克(日本大学法学部教授)

 安倍晋三内閣の支持率が急落している。各種の世論調査に基づく報道でも、「危険水域」といわれる支持率30%を割り込んだとされているほどである。数カ月前までは、「一強」といわれるほどの絶対的な支持率を誇り、国政選挙でも勝利を収めてきた安倍政権にどのようなことが起きたのであろうか。
2016年5月、1億総活躍国民会議であいさつする安倍晋三首相(左から2人目)。左は加藤勝信1億総活躍担当相=首相官邸(斎藤良雄撮影)
2016年5月、1億総活躍国民会議であいさつする安倍晋三首相(左から2人目)。左は加藤勝信1億総活躍担当相=首相官邸(斎藤良雄撮影)
 ここで各種の報道で言われている危険水域について考えてみたい。30%が危険水域とされていたのは、「55年体制」の下、自民党の一党支配のころの話である。時事通信社の世論調査を参考として、30%を下回ると内閣だけの評価にとどまらず、自民党の支持率にも影響を与えるとして危険水域の言葉が用いられたようである。この段階となると、首相を変えることで政党支持率への影響を下げる必要性が議論されることになる。低支持率が続くようであれば、首相・党総裁を辞任して、総裁選を開き新首相を選ぶことで内閣支持率の回復を図り、政党支持率の低下を避けようとするのである。

 このころの支持率を見ると、高いと評価される内閣でも55%を超える程度であり、連立政権下の現代とは支持率の内容が異なっているように思える。電話調査の普及により、メディアが行う世論調査の数が増加していることによる有権者の調査慣れ、連立政権による支持者の増加などの影響と予測されるが、60%を超えるような支持率も見られるようになった。したがって、危険水域も今までよりも高い水準で考える必要があり、35%程度でも十分危険といえる領域といえるのではないか。その証拠に、すでに自民党の政党支持率にも影響が出ているようである。かなり危険な領域にまで下がっているといっていいだろう。

 それでは細かい内容を見てみよう。安倍内閣での今までの支持率低下は政策によるものであった。集団的自衛権の行使容認などの政策について意見が分かれるのは仕方がなく、低下も一時的なものであり、安定した政権運営を続けていれば支持が戻る場合が多い。もちろん対抗勢力となる野党の実力不足、対応のまずさもあるのだが、危険とはいえない状況といっていいだろう。

 しかしながら、今回増加した不支持理由をみると、首相の信頼感の低下を理由とするものが多くなっている。この原因としては、「お友達内閣」と揶揄(やゆ)され、仲間だけで官邸を固めた2006年の第1次内閣と似ているように感じる。この場合、適材適所であれば側近で固めることは当然であるが、適材でない人材を登用すれば「ひいきの引き倒し」であり、国益を損なう可能性もありうる。閣僚や政務官などの内閣の役職者の失言や暴言、不適切な行動などは、適材ではなかったのではないかとの印象を強く受ける。もちろん、これだけではなく、組織犯罪処罰法の改正案をめぐる強引な国会運営も影響を与えたといえよう。次に挙げる問題も、こうした身内意識につながっている。