2017年07月24日 17:44 公開

ドナルド・トランプ米大統領は、ウォール街の投資会社創業者、アンソニー・スカラムーチ氏(52)をホワイトハウスの広報部長に任命し、広報戦略の刷新に着手した。21日の任命を受けて、ショーン・スパイサー大統領報道官は辞任を発表した。前任者のマイケル・ドゥブケ氏が5月に辞任して以来、スパイサー氏が広報部長の職務を兼任していた。

スカラムーチ氏をめぐっては6月、ロシア疑惑で連邦議会の調査を受けているという記事を米CNNが撤回し、編集者と記者の計3人が辞職している。

ハーバード・ロー・スクールから投資銀行を経て、投資会社スカイブリッジ・キャピタルを創業したスカラムーチ氏は、トランプ氏とは旧知の仲。共和党に高額献金を続け、トランプ氏の政権移行チームで上級顧問を務めた。

今年1月末のトランプ政権発足後、米政府の輸出信用機関、輸出入銀行の上級副総裁と主任戦略担当責任者に就任した。ホワイトハウスの広報部長には8月から着任する予定。

スパイサー報道官の辞任を受けて、副報道官だったサラ・ハッカビー・サンダース氏が後任の大統領報道官となる。スパイサー氏が辞任したのは、スカラムーチ氏の広報部長任命と関連した動きだと言われている。

トランプ政権発足当初、スカラムーチ氏は公共連絡局長として、政界と経済界のパイプ役就任が取りざたされていた。しかし、スカイブリッジ創業者としての利益相反が問題となり、その時点での公職就任はかなわなかった。

フォックスニュースの常連

スカラムーチ氏のあだなは「ザ・ムーチ」。ただしジョージ・W・ブッシュ元大統領は、「グッチ・スカラムッチ」と呼ぶのだという。

以前はフォックス・ビジネスで「ウォール・ストリート・ウィーク」という金融番組の司会を務めた。「ウサギ穴を飛び越えて――起業家が失敗を成功に変える方法」、「さようならゴードン・ゲッコー――魂を失わずに財産を手に入れる方法」、「ヘッジファンドの小さい本――本は小さく利益は大きく」というビジネス本も3冊発表している。

コメンテーターとしてフォックスニュースの常連で、これまでトランプ氏を擁護してきた。

ホワイトハウス関係者はロイター通信に対して、トランプ氏は21日午前にスカラムーチ氏と面接したと話した。大統領はただちにポストを提供し、スカラムーチ氏も即答で応諾したという。大統領の娘イバンカさんも、30分の面談に同席していたという。

任命直後の記者会見でスカラムーチ氏は、ラインス・プリーバス首席補佐官と対立しているという噂を否定し、「兄弟のように思っている」と述べた。

さらに、「6年前から個人的な友達」で、自分が選ばれたことにはプリーバス氏も関わっていると述べ、「たまにお互いをどつき合う兄弟のようなところが少しあって、それは兄弟だったらまったく普通のことだ」と話した。

「トランプは金目当ての政治屋」

スカラムーチ氏は「大統領が大好きだ」と繰り返した上で、2015年にフォックス・ビジネスの番組内でトランプ氏を「金目当ての政治屋」と非難した件については、「あんなことは言うべきではなかった」と認めた。

当時はトランプ氏がヘッジファンド業界を批判したのを受けて、スカラムーチ氏は「アメリカらしくない」発言だと反論し、トランプ氏はいずれ大統領(プレジデント)ではなく「クイーンズ郡いじめっこ協会」の会長(プレジデント)になるだろうと皮肉った(註・トランプ氏はニューヨーク州クイーンズ郡出身)。

スカラムーチ氏は当時、「政治家たちはトランプを非難しない。やかましいし、フォックスニュースでこてんぱんにこき下ろされたくないからだ」とあてこすり、「僕は政治家じゃない。あんたはクイーンズ出身の親の遺産で偉そうにしてる金持ちだ。来いよ、ドナルド!」と挑発していた。

スカラムーチ氏の発言が問題になったことはほかにもあり、政権移行委員会の副委員長だった昨年11月にはBBCに対して、就任式ではサー・エルトン・ジョンが演奏すると話した。しかしジョンさんの広報担当は「まったくのでたらめだ」とこれを否定。エルトン・ジョンさんは就任式で歌わなかった。

同じインタビューでスカラムーチ氏は、自分は「同性愛者の権利」を支援する活動家で、同性愛者の権利団体に高額寄付結を重ねてきたし、結婚の平等(同性結婚容認)を支持すると述べた。

2010年には米紙ニューヨーク・タイムズに、「自分は、ゲイの結婚を支持する。(女性の人工中絶)選択権を支持する。政府が自分の税金を引き上げても、構わない」と述べている。

ツイッターでは、任命発表当日に過去のツイートを次々と削除する様子が注目された。

後に削除された2012年のツイートでは、トランプ氏を「判断力がまったくない」「変わった奴」だと書いている。

スカラムーチ氏がすでに削除したこうしたツイートは、削除前に他のユーザーが画像保存している。その中で同氏は、ヒラリー・クリントン氏を「非常に有能」と称賛し、銃規制強化を呼びかけていた。

これに対してトランプ氏は22日、「本当のところアンソニー・スカラムーチは、共和党予備選が始まる前からまず僕を応援したかったんだが、僕が出馬するとは思っていなかったんだ!」とツイートした

「ウォール街をぶったたいて」

今年1月の米誌ニューヨーク・マガジンでは「ワシントンにいる連中」は「金がない」のだと分かったと言い、だからこそ席順や肩書にこだわるのだと理解したと話している。

2010年のテレビ討論会では、バラク・オバマ大統領(当時)に「ウォール街をピニャータみたいにぶったたくのはいつ止めるんですか」と質問した(訳注・ピニャータはメキシコの子供の誕生日会などにつきものの、薬玉のようなもの。中にお菓子が入っているので、棒でたたいて割る)。

これに対してオバマ氏は、「僕がウォール街を叩いてやっつけているというのは、なかなか面白い。メインストリート (一般市民の意味)のほとんどの人は、やっつけられてるのは自分だと感じてると思う」と答え、参加者の拍手を浴びた。

このやりとりがいくつかのマスコミに取り上げられると、当時のスカラムーチ氏は失言だったと認めた。「まるで鼻持ちならないエリート主義者のように聞こえたと気づいた。残念だ」。

トランプ家とつながり

スカラムーチ氏はトランプ氏の長男、ドナルド・トランプ・ジュニア氏と親しく、長女イバンカさんと夫のジャレッド・クシュナー上級顧問の尊敬も得ている。

最近では、トランプ・ジュニア氏が昨年6月にロシア人弁護士と面会していた問題が明るみに出ると、「ドナルド・トランプ・ジュニアは品行方正で高潔な男だ。善行とは、信念を持って行動する勇気のことだ。ドンは毎日そうやって行動している。#魔女狩りをやめろ」とツイートし、「彼を友人と呼べるのを誇りに思う」と書いた

広報部長としてスカラムーチ氏はまず、トランプ政権とロシア政府とのつながりの疑惑、2016年大統領選へのロシア介入疑惑をめぐる内外の疑問に答えていく必要がある。

このロシア疑惑をめぐっては、スカラムーチ氏自身もロシア疑惑で連邦議会の調査を受けていると報道された後、記事を米CNNが撤回し、編集者と記者の計3人が辞職している。

(英語記事 Anthony Scaramucci: Who is the new White House communications director?