武田文彦(リンカーンクラブ代表)

 7月2日の都議会選挙の選挙特番で自民党の大敗北を見て、私は思わず「ザマーミロ」と叫んでしまった。安倍政権誕生以来、初めて主権者から大きな鉄槌が下されたわけで、いささか遅きに失した感は否めないが、右翼ブレを修正する正常な反応が示されたようにも思えて、私はうれしかった。 

 結果論になるけれども、今回の自民党の大敗は当然といえば当然だった。安倍首相は、日本国憲法の背骨を折らんばかりの平和主義の放棄と、基本的人権の矮小(わいしょう)化をはかり、挙句、象徴天皇を元首に据え戻すという古色蒼然(そうぜん)たる改正草案を掲げて、その実現を図ろうとしてきたのだ。それが思うように進捗(しんちょく)しないとなると、日本国憲法の形躯化(けいげいか)を推し進め、集団的自衛権の行使はできると安倍首相の恣意(しい)的解釈をむりやり押し通して安全保障関連法案を成立させ、さらに特定秘密保護法という政治情報に関する情報公開の原則に真っ向から反対する法案を成立させ、あまつさえ、犯罪を共謀することだけで、実行が伴わなくても逮捕できるとする「共謀罪」法案を名前を変えるというあざとい方法で成立させてしまった。

 自民党は日本を戦前型の国民総監視社会へ押し戻すことに大きく成果をあげた。安倍政権を支えたのは、選挙を通して安倍総裁を頂く自民党を支持した多数の国民であり、そのことに私は大いに危機感を抱いていたが、この7月2日の都議選で自民党は改選前57議席が23に激減すると言う結果になって、磐石だった安倍政権が大きく揺らぐことになった。

 安倍政権に対して明確にNOという主権者が増えてきた結果であり、この原因を考えると、時間はかかったけれども、安倍政治に不信感を抱いたり、危険視する人が男女を問わず増え、それが投票に結びついた。

 また、安倍政権の施策とは別問題として、安倍内閣の法務大臣、総務大臣、防衛大臣、副総理、また自民党の国会議員たちによる、拙劣かつ非常識で高度な政治的見識のかけらもない様子もまた、自由民主党の劣化を印象付け、これも今回の都議選に男女の性差に関係なく影響を与えたと思う。

 さらに、森友学園問題や加計学園問題など、身内であるはずの文部科学省の前川喜平・前事務次官から安倍首相側からの圧力の内情を暴露され、さらに続々と安倍首相に不利な傍証(ぼうしょう)が露呈してもなお、ひとかけらの反省の色を示さなかったことは、嫌悪感情を抱かせるに十分であった。
                                
都議選の大敗について語る安倍晋三首相
=7月3日、首相官邸
都議選の大敗について語る安倍晋三首相
=7月3日、首相官邸
 今回の都議選の結果に対して、上記の理由のほかに、特に女性の支持率が下がったことが指摘されている。7月8日と9日に行われた朝日新聞の全国世論調査(電話)によると安倍内閣の支持率は33%で前回の調査の38%から1週間で5%も下がり、第2次安倍内閣発足以来最低の支持率になった。不支持率は47%で、特に女性の支持率は27%になり、かつての60%以上の支持率を半減させてしまった。

 この世論調査のように、なぜ女性が自民党を支持しなくなったのか、その理由について明確に指摘できる点が二つある。

 一つは安倍チルドレンの豊田真由子衆院議員の秘書に対する絶叫暴行事件がある。録音された豊田議員の罵声は都議選中にメデイアを通して何回も繰り返された。豊田議員の発言に政治的なことは一切ないが、これほどストレートに人の心に食い込む言動はなく、あの罵声を聞いた人は理屈抜きで豊田議員を軽蔑しただろう。