上久保誠人(立命館大政策科学部教授)

 どうしてこんなことになってしまったのか、というのが率直な思いだ。少し前まで、各種世論調査での安倍晋三政権の支持率は60%を超えていた。2012年12月の衆院選で勝利し政権の座に復帰してから、昨年7月の参院選まで国政選挙で4連勝した。安倍首相が目指す憲法改正を支持する勢力が、国民投票の発議可能となる衆参両院3分の2以上の議席を占めるまでになった。まさに「安倍一強」であり、向かうところ敵なしの勢いだった。

 ところが、安倍政権の支持率が急落した。学校法人森友学園、加計学園問題への批判や、度重なる閣僚・所属議員の言動への反発、「共謀罪」などの国会審議で、強行採決を多用した強引な手法への批判が政権に大打撃を与えたのだ。都議選では、首相の街頭演説に「内閣退陣」などの横断幕を掲げる100人以上の集団が現れ、「安倍やめろ」のコールを繰り返す異様な光景となった。都議選では、自民党が大幅に議席を減らし、過去最低の23議席という壊滅的な結果となった。

 安倍首相の街頭演説に対して、「安倍やめろ」コールを繰り返した集団の中に、1人の男が現れた。森友学園の籠池泰典前理事長であった。わずか3カ月ほど前には、自ら経営する塚本幼稚園で、園児に教育勅語を朗読させたり、運動会で「安倍首相がんばれ」と叫ばせたりする教育を行っていることが明らかになり、国民に衝撃を与えていた。また、設置申請中の小学校に「安倍晋三記念小学校」と名付けようとするなど、首相に心酔していたようにみえた籠池氏が、首相に退陣を迫る集団の中で、「安倍はうそつきだ」と叫んだことには、驚かされた。

都議選候補者の街頭演説会場を訪れた森友学園の
籠池泰典前理事長=7月1日、東京・秋葉原
 籠池氏が、確固たる保守思想に基づいて行動してきた人物ではないことは、明らかだろう。森友学園への国有地売却を巡る一連の騒動の中で、首相に裏切られたと感じて切れたということは理解できる。だが、突然「敵」であるはずの共産党の小池晃書記局長らと一緒に記者会見し、共闘関係になるというのは、あまりにも行動が極端すぎる。

 これは、籠池氏が実は何の思想信条も持っておらず、保守思想は彼にとって「ファッション」でしかなかったということを示している。換言すれば、保守思想を学校という金もうけの場での「道具」として使ったに過ぎなかったのだろう。だが、安倍首相はそんな人物の取り扱いを誤ったことで、「反安倍運動」の想定外の広がりを許してしまった。

 森友学園への国有地売却問題が表面化したとき、安倍政権に大きなダメージを与える問題になるとは思っていなかった。これは、日本の地方政治で日常的によく行われていることに思えたからだ。