2017年08月02日 14:05 公開

日本の相撲界は長い間、モンゴルの力士に席巻されていて、ブンエーデン・トゥフシンジャガルさん(17)もその足跡を追いたいと思っている。女子としてそれは、何世紀も続く伝統に挑むことを意味する。しかしトゥフシンジャガルさんは、その戦いを受けて立つ心構えができている。ウランバートルの自宅でジャーナリストのエリン・クレイグ氏が話を聞いた。

土俵の片側では、屈強で手ごわそうな力士が、伝統的な回しを腰に巻いてしゃがみ、蹲踞(そんきょ)の姿勢を取っている。対するは、スパンデックス製の黒いウェアの上に回しを絞めたブンエーデン・トゥフシンジャガルさんだ。

両力士は待ち、にらみ合い、互いに向かって勢いよくぶつかり合う。土俵の中央で激突し、むき出しの力でゆっくりと踊るダンスのように全力で組み合う。

その後トゥフシンジャガルさんは前方へと突進し、相手を力ずくで土俵の外へと押しやる。

マットでできた土俵を降りる際、トゥフシンジャガルさんは珍しく一瞬、笑みを浮かべる。

「怖がったらだめです」と相撲の世界チャンピオン、トゥフシンジャガルさんは言う。「怖がったら勝てません」。

子供のころ、トゥフシンジャガルさんは祖父母と一緒にテレビで相撲を見たものだったが、まさか自分が相撲選手になるとは夢にも思っていなかった。その後、柔道を始めたのだが、2015年、柔道の指導者から翌月の大会に出てみないかと言われた。

その大会とは、世界ジュニア相撲選手権だった。トゥフシンジャガルさんは銅メダルを持ち帰った。昨年再び出場し、金メダルを獲得した。

トゥフシンジャガルさんを指導するガンフヤグ・ナランバタ氏は、まだ始まったばかりだと考えている。自身もかつてプロとして相撲を取る力士であり、世界選手権の金メダリストでもあった同氏は、選手の何を見ればいいのか分かっている。

「トゥフシンジャガルさんは重量級で世界チャンピオンに3回以上なると思う」と予測する。そうなれば、トゥフシンジャガルさんのチームメイト、キシドルジ・サンジマーさんが昨年打ち立てたばかりの世界記録を破ることになる。

ガラス天井ならぬ和紙の天井に向けて

しかしいくつの記録を破ろうと、トゥフシンジャガルさんのキャリアはガラス天井ならぬ和紙でできた天井に近づきつつあった。相撲界でプロになれるのは男性だけなのだ。

相撲がプロ競技として行われているのは日本だけで、そこでは力士が年6回の場所に出場する。相撲はもともと宗教的な儀式として始まり、現在も非常に儀礼的だ。伝統では、女性は土俵に上がることすら禁じられている。

しかしアマチュアのレベルでは、相撲をオリンピック正式種目にしたいと願う人たちが男女の競技とするよう働きかけ、1990年代以降は女子の競技も行われている。相撲はいまだ五輪競技になっていないが、12回の世界選手権が行われ、女子は相撲になくてはならないものとなった。

多くの女子選手とは異なり、トゥフシンジャガルさんは相撲が非常に人気の国出身だ。モンゴル人力士は、長い間プロの相撲界を席捲している。モンゴル人のスーパースター力士白鵬が7月、歴代最多勝利記録を塗り替えたばかりだ。

モンゴルの文化において、伝統的な男の3競技の1つとしてモンゴル相撲(ブフ)は常に重要だった。そして多くの男の子が、伝統的なモンゴル相撲と共に日本の相撲を習う。

ナランバタ氏によると、伝統的なモンゴル相撲の動きを持ち込んだことで、モンゴル人は日本の相撲を根本から変えた。相撲の取り組みは数秒で終わることもあるが、モンゴル相撲は土俵に限定されず、より長い時間と戦略が必要となる。

「モンゴル人力士が登場する前は、相撲はただ押し合うだけでした」とナランバタ氏は話す。「モンゴル人力士のレベルが高いのはそのためです」。

将来を築く

しかしモンゴルのメディアはアマチュア相撲を取り上げておらず、女子選手は永遠に暗闇に取り残されたままだ。女子の相撲選手が存在すると知り、大抵の人は驚く。

女子選手の実力を目にし、人はさらに驚く。

「みんな、私がこのマットにいると、まるで野獣みたいだと言います」とトゥフシンジャガルさんは認める。「でもこの建物から出たら、私はただの女の子なんです」。

この年齢のほとんどの人と同じように、トゥフシンジャガルさんも将来のことを考えている。今年6月に高校を卒業した後、大学に願書を送ったりキャリアを考えたりと忙しい。何よりも、女子相撲選手としての道を築きたいと思っている。

「相撲にかけているんです」とトゥフシンジャガルさんは話す。「一番高いレベルにまで追い求めたい」。

アマチュアは通常スポンサーを得られないため、職業として成立できるかは不明だ。モンゴル政府はメダル獲得者に賞金を出しているが、大きな国際大会は年に1度しかないため、金メダルでさえも生活するには十分ではない。

トゥフシンジャガルさんは、他に情熱を持っているもの――演技――をスポーツと結び付けたいと考えている。トゥフシンジャガルさんが大好きな映画スター、ジャッキー・チェンのように。

前例がないわけではない。モンゴル相撲の王者オランバヤル・ビャンバジャブ(大翔地健太)氏は、複数のテレビ番組に出演している。もしくは新しい領域を開拓し、モンゴル初の女性の相撲指導者になれるかもしれない。

チャンピオンになれる――許されるのなら

チームメイトの多くと同様、トゥフシンジャガルさんは支えてくれる家族に頼ることもできる。トゥフシンジャガルさんの祖父母は、テレビではなくトゥフシンジャガルさんを通じて相撲を体験できることを楽しんでおり、祖父母の自宅の壁は、回し姿のトゥフシンジャガルさんの写真で埋め尽くされている。

2018年の世界選手権は、年上の女子選手たちを負かして成人部門の出場権を獲得しない限り、トゥフシンジャガルさんにとってジュニア部門最後の取り組みになる。

トゥフシンジャガルさんは、2016年の世界選手権でモンゴルの女子代表チームとしてすでに戦っており、団体で2位になっている。

その後、トゥフシンジャガルさんの目は2021年のワールド・ゲームズに向けられており、そしてもしかしたら、いつの日かは五輪へと向けられるだろう。

ナランバタ氏は教え子の実力について、静かな自信を持っている。結局のところ、トゥフシンジャガルさんは今でも十分、男子を負かすほど強いのだ。一度戦略を身につけてしまえば、トゥフシンジャガルさんを止められるものは何もないだろう。

もし規則が変わったら……もし女子がプロになるのを許されたなら、トゥフシンジャガルさんにその実力はあるだろうか?

「ええ」とナランバタ氏は言う。「チャンピオンになれるでしょう」。

(英語記事 Mongolian teenage girl grapples for a future in sumo