櫻田淳(東洋学園大学教授)

 第3次安倍晋三第3次改造内閣が発足した。数カ月前には「安倍一強」の言葉で語られていた政治の風景は、今では様変わりしている。メディアによっては、安倍内閣支持率が既に30%を割り込んでいる。安倍総理にとって、此度(こたび)の内閣改造は「反転」の一手たり得るのであろうか。

 筆者が下す内閣評価の基準は、第1が「外交・安全保障政策を切り回せるか」であり、第2が「経済を回せるか」である。日本は、中露両国や米国のように「繊細さ」を軽んじる対外政策展開に走ることができる国ではない。世の人々は、自分の身近な生活に直結する内治案件の行方に関心を寄せるものであるけれども、日本の平和と繁栄は絶えず良好な対外関係にこそ依存する。「ジャパン・ファースト」のような類(たぐ)いの標語を無邪気に呼号するわけにはいかないのが、日本の立場である。

 故に、何時の場合でも、組閣人事に際して真っ先に関心が向けられるべきは、外務・防衛の2つの大臣職に誰が起用されるかということになる。此度の場合、次の2つの点を当座の論評として提示できよう。

 第1に、小野寺五典氏を防衛大臣職に復帰させたのは、安倍総理における正当な判断であった。4カ月前、筆者が「稲田朋美の『軽さ』は安倍総理の油断の象徴である」で指摘したように、稲田朋美前防衛相の任用は、安倍総理における「油断」を象徴していた。安倍総理が稲田氏の「損切」に踏み込めず、その機を逸し続けたことは、安倍内閣の政権運営に「下降モメンタム」が生じる一因となった。
小野寺五典防衛相が陸上自衛隊霞ヶ浦駐屯地を視察に訪れた=2014年4月16日、茨城県の陸上自衛隊霞ヶ浦駐屯地(鴨川一也撮影)
小野寺五典防衛相が陸上自衛隊霞ヶ浦駐屯地を視察に訪れた=2014年4月16日、茨城県(鴨川一也撮影)
 安倍総理が、そうした逡巡(しゅんじゅん)への反省を踏まえて小野寺氏を再び起用したのであれば、安倍内閣の安全保障政策に係る態勢は、「原点」に回帰したと評することができよう。小野寺氏における安全保障政策領域の見識や政治姿勢の手堅さについて、それを疑う声を筆者は聞かない。

 第2に、興味深いのは、河野太郎氏の外相起用であろう。彼の場合、「河野談話」に名を残し、その故に特に右派層からの評判の最悪な河野洋平元衆院議長の子息という風評は絶えず付きまとう。河野洋平氏自身は、近時でさえ安倍内閣下の対外政策、特に対中政策を評し、「中国の嫌がることばかりやっている」と批判している。河野洋平氏の鮮烈な「対中・対韓宥和(ゆうわ)」志向姿勢の故に、河野太郎氏にも同様な志向があると見る向きは確かにある。ただし、父親と子息の政策志向が同じでなければならない理由はないし、世代も異なる。