上杉隆(メディアアナリスト)

 世襲が多く、派閥均衡。第3次改造内閣をひとことでいえば、スキャンダルを未然に防ぐ、かつての自民党型の内閣改造である。

 良く言えば「安定政権」を目指す布陣、悪く言えば「スキャンダル隠し」、「逃げの改造」である。

 メディアは、河野太郎外務大臣、野田聖子総務大臣がサプライズではないかと言うだろう。両者とも大臣適任期の当選6回以上、派閥推薦、さらには世襲である。

 よって、改造の顔ぶれの分析に終始したら、本稿は退屈な論に陥ろう。ということで、顔ぶれの解説ではなく、改造手法の変更(先祖帰り?)に伴う安倍晋三首相の考え、さらには、今後、安倍首相の目指す政権運営の方法と、政治的な狙いについて考察を加えたい。

 まず、呼び込みの前に、党幹部人事も含む19人の閣僚名簿のすべてを、記者クラブメディアに漏らしたのは、森政権以前の旧(ふる)い手法に戻ったと言わざるを得ない。旧自民党型改造の先祖帰りである。

 一方で、新しい手法を用いて組閣をメディアの一大ショーにまで引き上げたのが小泉首相である。

 1、呼び込みの是非をショー化(呼ばれるまでリークはない)。
 2、ポストの提示は本人に直接(官邸に行くまでどの官庁の大臣か本人もわからない)。
 
 このような手法を用いたため、メディア、特にテレビは狂喜乱舞することになった。

 大臣適任期の議員事務所にカメラを設置し、官邸からの電話に一喜一憂する姿を収める。呼び出しを受けた議員には、そのまま官邸まで記者がインタビューしながらカメラを回して感想を聞く。さらに呼び込みを受けた議員の顔写真をスタジオのボードに張り出し、誰がどのポストになるかをコメンテーターらが予想する。
 
 侃々諤々(かんかんがくがく)の議論はまさに昼のワイドショー、夕方の情報番組向きの最良のネタになった。換言すれば、内閣改造で「数字」(視聴率)が取れるようになったのである。

自民党の新役員が決定し、手をつなぐ(左から)塩谷立選対委員長、竹下亘総務会長、高村正彦副総裁、安倍晋三首相、二階俊博幹事長、岸田文雄政調会長=8月3日、東京・永田町の党本部
自民党の新役員が決定し、手をつなぐ(左から)塩谷立選対委員長、竹下亘総務会長、高村正彦副総裁、安倍晋三首相、二階俊博幹事長、岸田文雄政調会長=8月3日、東京・永田町の党本部
 小泉首相が意識してこの手法を用いたのかは定かではない。だが、安倍首相も第一次政権時代から一応(時に一部)、この手法を踏襲してきた。よって、小泉政権以降、派閥順送りの推薦名簿は事実上、無意味になっていたのだ。

 ところが、今回は完全に小泉内閣の前の、森首相時代以前への「先祖帰り」の手法となった。「旧自民党型改造」と言っていいほどの旧(ふる)い手法である。

 そこで、今回の内閣改造で大事なことに触れたい。メディアは就任した大臣の顔ぶれではしゃぐよりも、交代して内閣を去った大臣の検証をおこなうべきだろう。それが新しい内閣の性質をみる上でも重要な要素となる。