向谷匡史(作家)

「火中の栗」を拾う。これを武勲と考えるのは一兵卒である。

 将来を嘱望される若手士官は、そんなリスクは決して冒さない。火の勢いが収まったところを見はからって、こんがりと焼けた栗をひょいとつまみあげる。「ノーリスク、ハイリターン」。それが若手士官―すなわち、小泉進次郎氏の処し方と言っていいだろう。

 揶揄しているのではない。リスクを避けつつ将来の目標を達成するには、組織における自分の立ち位置や状況、展望、さらに人間関係といった要素を総合的に勘案し、冷静に読み切らなければならない。

 男気を見せて「火中の栗」を拾い上げるのはヒロイズムであって、ニンマリするのはその栗をちょうだいする人間だけ。この現実にどこまで気づくことができるか。安倍改造内閣の目玉とされながらも入閣をかわした進次郎氏の処し方は、「組織における間合い」というものを私たちに教えてくれる。

 進次郎氏の非凡なところは、「風」を的確に読む能力だ。順風であれば帆を高く掲げ、逆風であれば帆を巻くのは当然としても、問題は、いまの風が順風か逆風かを見抜く眼力である。
講演する小泉進次郎氏=3月16日、東京・東新橋
講演する小泉進次郎氏=3月16日、東京・東新橋
 たとえば、進次郎氏が初出馬した2009年夏の総選挙は、自民党に大逆風が吹き荒れ、民主党(当時)が「時代の寵児」となっていた。「逆風に帆を巻く」というセオリーからすれば、自民党から出馬するのはリスキーである。

 「なぜ、自民党なのか」とメディアに問われて、進次郎氏は毅然として答える。「そのときの政党に対する支持率が高い低いで自分がどこにいるか決めたら、政治家としての信念はなくなる」。信念に殉じて「火中の栗」を拾う―そう言ったのだ。イケメンの下に隠された男気を有権者は見たことだろう。

 だが、視点を変えれば違った様相が見えてくる。大逆風に見舞われた自民党は、株式にたとえれば底値だったのだ。〝含み資産〟からすれば異常に低い株価で、これから必ず反騰するだろう。逆風に見えて、実は順風であると読めば、自民党は「買い」なのだ。だから進次郎氏は帆を高く掲げ、「政治家の信念」という言葉を敢然と口にしたものと読み解ける。