その真逆が、今年2月に行われた千代田区長選挙だ。周知のように、小池百合子氏と都議会自民党との代理戦争として注目された。劣勢が伝えられた自民党陣営は、進次郎氏の選挙応援に期待した。

 「人寄せパンダ」と自ら称したのは田中角栄だが、進次郎氏はこのフレーズを踏襲してパンダを自認。自民党が大勝した2012年の衆院選では全国を飛び回り、応援に入った選挙区候補の勝率は実に96%だった。自民党陣営は進次郎氏の投入に乾坤一擲(けんこんいってき)の勝負を賭けたのである。

 ところが、「通常国会の真っ最中のため、スケジュールが合わない」ということで、あっさり断られてしまった。千代田区長選は国政にも影響を及ぼす代理戦争である。しかも応援に入る千代田区は国会の眼と鼻の先にあるにもかかわらず、「進次郎パンダ」はスケジュールを理由に断ったのである。

 自民党推薦の与謝野信候補は確実に負ける―。進次郎氏は、そう読んだはずだ。自分が応援して負けたら、世間はどう見るだろうか。「負け戦を承知で、あえて火中の栗を拾った」という評価はしてくれまい。「進次郎の神通力もここまでか」と思うだろう。

 雨乞いの祈祷で雨が降るとは信じていなくても、祈祷して効果がなければ祈祷師の悪口を言う。これが人間心理であり、進次郎氏はそのことを熟知しているがゆえに、あえて応援演説に行かなかったものと思われる。上野動物園のパンダは、見物客など意識の外でノンキに笹の葉を食べているが、「進次郎パンダ」は、自分がどう見られているかを冷静に判断しているのだ。
有権者らの握手攻めに遭う小泉進次郎氏=2016年7月、茨城県常総市
有権者らの握手攻めに遭う小泉進次郎氏=2016年7月、茨城県常総市
 では、このたびの安倍改造内閣で、進次郎氏はなぜ入閣しなかったのか。改造の目玉として取り沙汰されてきただけに、打診は当然あったはずだ。事実、自民党の二階幹事長も6月20日のテレビに出演し、進次郎氏の入閣、もしくは党役員就任について「安倍総理の念頭にあるはず」「何の役でも何大臣でも務まる人だと思っていますよ」と発言している。

 あえて「若い進次郎」にメディアを通じてラブコールを送らざるを得ないほど、自民党を取り巻く状況は、いま大逆風にある。だが、進次郎氏が初当選した2009年の大逆風と決定的に違うのは、当時は自民党の〝底値〟であったのに対して、現在のそれはどこまで値を下げるかわからないということだ。

 自民党という「栗」は、いま燃えさかる火中にあると進次郎氏は読んだからこそ、入閣を受けなかったのではないか。これが〝底値〟―すなわち、火勢が衰えつつあると読んだのであれば、進次郎氏はひょいと栗をつまみあげていたことだろう。