田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 安倍政権は内閣改造によって、下がり続けた支持率に歯止めがかかった。それでも、国民の政府に対する見方は依然として厳しいものがあるだろう。安倍政権はいままでも、そしてこれからも経済と外交を特に重視した運営を行うはずだ。中でも経済政策のスタンスは極めて重要だ。
8月3日、初閣議後の記念撮影に臨む安倍晋三首相と閣僚(酒巻俊介撮影)
8月3日、初閣議後の記念撮影に臨む安倍晋三首相と閣僚(酒巻俊介撮影)
 その意味では、安倍晋三首相が内閣改造後に出演したテレビ番組で、2019年秋に予定されている消費増税の再引き上げを明言したことに、筆者は大きく落胆した。日本経済の長期停滞からの脱却にあと一押しが足りないのは、2014年4月からの消費増税による消費低迷に原因があることは、この連載でも何度となく指摘してきたことである。

 最近の消費統計をみると、今年に入ってからの株高・円安傾向による「資産効果」や所得増などによって消費がやや上向き始めているが、それでも力強さには欠ける。その原因としては将来の増税を予想して現在の消費を手控えて、貯蓄してしまうことが考えられる。その意味では、安倍首相が予定通りの増税実施を確言したことは、消費者のデフレマインドをさらに定着させてしまっただろう。

 確かに、現在の政治状況から、この時期に消費増税の「凍結」やあるいは減税などのオプションに言及することは難しい、という指摘もある。ただ、安倍政権が今後、経済政策で積極姿勢を鮮明にしない限り、内閣支持率の上昇を含めて政権の再浮揚は困難だろう。

 また、経済政策は単に政権の安定だけが目的ではもちろんない。私たち国民の経済状況、さらには直接に「生命」に関わる問題でもある。7月後半に出された最新の統計によれば、今年前半の自殺者数は前年比で約5・1%減少の1万910人であった。自殺者数は民主党政権時代の後半から減少しているが、その勢いが加速したのは第2次安倍政権になってからである。その要因は、自殺対策への政府・地方政府の予算増加、さらには積極的な財政・金融政策による景気の改善効果によるものが大きい。