安倍宏行(Japan In-depth編集長)

 「忖度(そんたく)」メディアなんて、とんでもない名前を頂戴したものだ。読売新聞さんのこと。5月22日の「前川前文科次官 出会い系バー通い」報道がそれだ。
「中曽根康弘先生の白寿を祝う会」で談笑する安倍晋三首相(右)と発起人の渡辺恒雄・読売新聞グループ本社代表取締役主筆=5月15日(宮川浩和撮影)
「中曽根康弘先生の白寿を祝う会」で談笑する安倍晋三首相(右)と発起人の渡辺恒雄・読売新聞グループ本社代表取締役主筆=5月15日(宮川浩和撮影)
 タブロイド紙でもあるまいし、目を疑った読者も多かったろう。安倍政権が連日加計学園問題で野党から責め立てられていた時期である。官邸の意向を忖度して書いたとみられても仕方ないではないか。

 そもそも放送法の縛りがない新聞は、その論調が右か左かはっきりしている。朝日新聞と産経新聞が真逆にいるのは誰でも知っていることだし、読売新聞が保守寄りであることに誰も異論はないだろう。しかし、今の読売新聞はあまりに政権寄りではないか、と首をかしげざるを得ない。その理由の一つが前川喜平前文科次官の「出会い系バー通い」報道なのだ。

 確かに官僚、それも文科省の前トップが、いくら社会勉強だからといって頻繁にそうした店に通うことに違和感を覚える人は多かろう。しかし、それと加計学園問題とは別だ。誰が見ても前川氏に対する人格攻撃に見える。

 人格攻撃とは、相手をおとしめるために相手のあらを探して行われることが多い。もし、それをやれば、人格攻撃をした方に何か後ろめたいことがあるのではないか、と痛くもない腹を探られるから、普通はやらない。それでも、なおかつそうした手法を取るということは、相手を消し去りたいくらいの「何か」があるのではないか、と勘繰られて当然だ。だからこうした「怪文書」的な手法はもろ刃の剣といえる。慎重に扱うべきであることは言をまたない。

 「出会い系バー通い」報道で、報道する価値があるとすれば、そこに犯罪性があったかどうか、その1点に尽きる。しかし、結局犯罪性は出てこなかった。読売新聞は、政権に忖度して報道した、とみられても仕方がない。

 それどころか、前川氏が会っていた複数の女性から、就職や家庭の問題で相談に乗ってもらってよかったなどという証言が週刊誌で報道されるに至り、前川氏に対する印象操作は全く裏目に出てしまった。あの忖度報道は一体何だったのか。ちゃんと裏を取って書いたのか、と疑われても仕方がない。だからこそ慎重に扱うべきであった。政権の足を引っ張ることになっていることに気付かないのか。