飯田哲也(環境エネルギー政策研究所所長)

 経済産業省は7月28日、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場への適性度合いを全国地図で示す「科学的特性マップ」を公表した 。これを見ると、日本の基礎自治体1750のうちおよそ900、陸地の約3割が「有望」となっている。

 早速、各方面で物議を醸しているものの、経産省は「当初の目的」は果たしたと思える。「当初の目的」とは、小泉純一郎元首相が「日本では核のごみの最終処分場は見つからない」とした問題提起に対する「答え」である。

 しかしながら、小泉元首相に答えたのはよいが、そもそも問題自体の回答にはなっていないことが致命的だ。この「科学的特性マップ」は、最初から行き詰まっており、失敗が確定しているのだ。
講演する小泉純一郎元首相=2016年11月、新潟市中央区(臼井慎太郎撮影)
講演する小泉純一郎元首相=2016年11月、新潟市中央区(臼井慎太郎撮影)
 そもそも「科学的特性マップ」とは何か。その前に、ここに至る経緯を見ると、ほとんどジョークだ。曰く「『科学的有望地』は誤解や不安を招くから『マップ』と言いたい」、曰く「冷静な議論ができなくなるから『候補地』『適性』は禁句」。こうして用語一つで迷走を繰り返した揚げ句に「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い科学的特性マップ」と意味不明の表現となり、原発推進の旗幟(きし)を鮮明にする産経新聞からさえ「言葉遊び」「意味不明」と批判されている。

 この迷走する「言葉遊び」の経緯を見るだけでも、すでに袋小路に陥っていることがうかがえる。それも当然だ。この核廃棄物最終処分場「科学的特性マップ」のアプローチは、最初から失敗が確定している。こんな「科学的特性マップ」に注目すること自体に何の意味もない。
 理由を説明しよう。

 改めて歴史を振り返ると「失敗のデジャビュ(既視感)」を見るようだ。今、国(経済産業省)が中心となって進めている「科学的有望地」の提示は、1990年代まで旧動燃(現:核燃料サイクル機構)が行ってきて頓挫した「研究開発アプローチ」の失敗に舞い戻っている。

 当時は、「旧動燃の失敗」を踏まえて、2000年に事業実施主体として原子力発電環境整備機構(NUMO)が設立され、2002年から処分地選定の公募が始まった。科学的に適地をスクリーンニングするのではなく、手を挙げたところが適地かどうかを判断するなら候補地が見つかるのではと考えたわけだ。

 しかしこの公募方式も、やはり行き詰まった。NUMOの公募では、文献・概要調査だけで6年間でおよそ45億円もの交付金が配られる。後で否決しても返さなくてもよい。その「アメ」で釣った結果、さまざまな地名が取りざたされ、2007年1月、高知県東洋町長が町議会の同意も得ずに候補地の調査に手を挙げた。だが、町を二分する騒動の揚げ句、町長が町民の信を問うとして辞任し、その出直し選挙では大差で敗れた。その後は、他の地域もすっかり手を挙げる動きはなりを潜めた。