2点目は、処分施設受け入れのメリットについて具体的に伝えることだ。これは何も、調査段階においても年間数億から十数億円程度の財源効果があるという経済的メリットのことのみを意味するのではない。放射性廃棄物の処分は先進的なプロジェクトであり、誘致することで自治体にどのような変化と将来設計があり得るかというイメージを持ってもらうことが重要だ。

 わが国では「ごみ」や「トイレ」という負のイメージが強く、経済的メリットと引き換えにこれを受け入れることに関心を持つこと自体が卑しいこと、やましいことと批判する風潮が強い。最終処分地の建設や選定で先んじるフィンランドやスウェーデンなどの自治体関係者からはそもそも、地層処分は先進技術の粋を集めたプロジェクトであり、多様な分野の優秀な研究者が自治体に集まることへの期待が聞かれる。彼らは「負」を受け入れたという理解はしていない。
経産省などが開いた核のごみの最終処分へ理解を求めるためのシンポジウム=5月14日、東京都
経産省などが開いた核のごみの最終処分へ理解を求めるためのシンポジウム=5月14日、東京都
 スウェーデンの処分施設が建設されることとなったエストハンマル市の市長は、決定プロセスにおいて自治体の自主性や公開性・透明性が確保されていたこと、安全面に関して国の規制当局が適切に関与していたことに加えて、早い段階から社会経済面の影響について調査・分析を行い、処分場が立地することでエストハンマル市が「ハイテク技術が集まる工業地帯」になることができるという前向きな評価を市民と共有できたことが重要であったと述べている。当該事業により多大な投資が得られ、市民の雇用や生活の向上に寄与することで市が発展することを確信しているとも発言している。

 わが国でも、候補地が決定した段階で原子力発電環境整備機構(NUMO)はその拠点を当該地に移すことを決定している。処分事業は単に土を掘って面倒な「ごみ」を埋める事業ではない。高度な安全管理に関する技術や後世に危険物がそこにあることを伝えるための社会文化的手法など、さまざまな知見が必要とされる。

 私自身も何気なく使ってしまうことがあるが「核のごみ」、「トイレなきマンション」と言った、強い負のイメージを持つ言葉は非常にキャッチーであり、人々の間に急速に伝播(でんぱ)し、思考を停止させる。そうした先入観にとらわれず、事業をきっかけに自治体の将来を描くことができるよう、政府には改めてこの事業の意義、自治体にとってのメリットを伝えていく必要があるだろう。

 3点目として、核燃料サイクル政策全体に対して、責任ある説明を行う必要性を指摘したい。東電福島原発事故を契機に、国民は原子力政策全体を根底から見直すべきであると認識しており、特にこれまで技術的トラブルなども多く、政策の実現が当初予定から大幅に遅れ、コストも上振れしている核燃料サイクルについては批判が強い。既にわれわれの前にはガラス固化体に換算して約2万5千本の使用済み燃料が存在しているという理由だけで地層処分について議論を進めることに理解は得られないだろう。