2017年08月10日 13:34 公開

米トランプ大統領は、北朝鮮からの脅威に対し「世界が見たこともない炎と激怒で対抗する」と公言した。

一方北朝鮮は、米領グアムに向けてミサイルを発射すると脅している。グアムには16万3000人が暮らしている。

一連の出来事は、北朝鮮政府がついに核弾頭の小型化に成功した可能性があるとの報道を受けたもの。核弾頭は、米国やそのアジア同盟国が長い間懸念していた大陸間ミサイルに搭載できる可能性がある。

軍事衝突の前兆だろうか?

専門家は、パニックすべきではないと話しているーーまだ今のところは。以下がその理由だ。

1. 戦争したい人など誰もいない

心に留めておくべき最も重要なポイントの一つだ。朝鮮半島での戦争は、誰の得にもならない。

北朝鮮政府が主に目指しているのは、生き延びることだ。米国との戦争は、その目標を深刻な危険にさらすだろう。BBCのジョナサン・マーカス防衛担当特派員は、現在の状況下で北朝鮮が米国やその同盟国を攻撃した場合、すぐにより広範な戦争に陥る可能性があると指摘する。金正恩政権は自暴自棄なわけではない、ということを前提とするべきだろう。

実のところ、北朝鮮が核武装国になろうとこれまで懸命に努力してきたのは、そのためだ。核があれば、北朝鮮によると、政権を倒す代償がより高くつくため、核が政権を保護してくれる。金正恩氏はリビアのムアンマル・カダフィやイラクのサダム・フセインのようになりたくはないのだ。

韓国・ソウルにある国民大学校のアンドレイ・ランコフ教授は英紙ガーディアンに対し、「衝突の可能性は非常に低い」が、現時点で北朝鮮はそれと同じくらい「外交交渉に興味がない」と話した。

「北朝鮮はまずシカゴを地図から消し去る能力を得たいと考えており、外交的解決に関心を持つのはその後だろう」とランコフ教授は話した。

米国からの先制攻撃はどうだろうか?

米国は、北朝鮮を攻撃すれば、彼らが韓国や日本に報復せざるを得なくなることは分かっている。

そうすれば多くの人命が失われる。そこには、兵士や民間人の何千という米国民も含まれる。

さらに、核弾頭を搭載したミサイルが米国本土に発射されるというリスクを米政府は負いたくはない。

最後に、北朝鮮にとって唯一の同盟国である中国は、金政権の崩壊の方が戦略的に良くない結果だと考えている。だからこそ金政権を支えてきた。中国国境を隔ててすぐそこに米国と韓国の兵士がいるなどというのは、中国政府が直面したくない将来だ。しかし戦争となれば、そうなるだろう。

2. 目にしているのは言葉であって行動ではない

トランプ大統領は米国の大統領が通常口にしないような言葉を使って北朝鮮を威嚇したかもしれないが、だからと言って米国が積極的に臨戦態勢を取ろうとしているわけではない。

ある米軍関係筋はロイター通信に対し、「レトリックが強まったからと言って、我々の姿勢が変わるわけではない」と話した。

米紙ニューヨーク・タイムズのコラムニスト、マックス・フィッシャー氏はこれに同意する。「国際関係で最も重要なのはある種の合図であり、指導者が思い付きで口にする発言ではない」。

さらに、北朝鮮が7月に大陸間弾道ミサイルの発射実験を2度行った後、米国は実証済みの戦術に立ち戻った。国連安全保障理事会による北朝鮮の制裁措置だ。

そして米国の外交官たちは、中国やロシアから支持を得ていることも指摘しつつ、依然として交渉再開に期待を示している。

これは北朝鮮に相反するメッセージを送ることになるが、同時にトランプ氏の厳しい語調を和らげることになる。

だが、現在の緊迫した状況では、解釈を誤れば偶発的な戦争につながるおそれがある。

米シンクタンク、軍備管理協会(ACA)のダリル・キンボール氏はBBCに対して、「北朝鮮で停電が起こり、それを彼らが先制攻撃の一部と考えるかもしれない。また、米国が非武装地帯(DMZ)で間違いを犯すかもしれない」と話した。

「双方が計算を誤り、状況がエスカレートして手に負えなくなる方法は色々ある」

3. 過去にも同じことが

米国のP・J・クロウリー元国務次官補は、北朝鮮政府が1994年に自国の核施設に国際査察団が入ることを拒否した際、米国と北朝鮮は武力衝突寸前の状態だったと指摘する。当時は外交が勝利した。

北朝鮮は何年にもわたって米国や日本、韓国に対して挑発的な脅しを繰り返し、ソウルを「火の海に」すると何度か脅してきた。

トランプ氏の発言は内容で、ともすれば発言の仕方でも米国の大統領として前例がないというわけではない。

クロウリー氏は、「米国はこれほど過激ではないにせよ様々な形で、北朝鮮が攻撃を仕掛ければ、北朝鮮の政権が崩壊すると常に伝えてきた」と述べた。

その上でクロウリー氏は、今回の違いは米大統領が先制攻撃を仕掛けると示唆している様子だったことだ(後になって、レックス・ティラーソン国務長官がこれを弱める意図の発言をしたが)。

ホワイトハウスによるこの種の予測できない好戦的な発言は異例で、人々を不安にさせると専門家たちは言う。

だが、北朝鮮との衝突で失うものが最も大きい米国の同盟国の韓国は、あまり懸念していないようだ。

韓国大統領府の高官は8月9日に報道陣に対し、状況は危機的なレベルには達しておらず、平和的に解決できる可能性は非常に高いと話した。

これは楽観視できる材料だろう。

(英語記事 North Korea-US tensions: How worried should you be?