いま、このタイブレークを導入すべきだ、という議論が再燃しているのが高校野球界である。今年の選抜大会では、準々決勝進出をかけた2回戦、滋賀学園-福岡大大濠、健大高崎-福井工大福井がともに延長15回の末に引き分け再試合になるという史上初の事態が発生。福岡大大濠のエース三浦銀二は延長15回で196球、中1日置いての再試合でも9回を130球。ともにひとりで最後まで投げ抜き、8強進出を決めている。が、準々決勝の報徳学園戦では、さすがに八木啓伸監督が登板を回避。控え投手に外野手や捕手を注ぎ込みながら、報徳に大敗して甲子園を去った。
第99回全国高校野球選手権、日大山形戦に六回から登板、延長十二回まで無失点に抑えた明徳義塾の市川=8月9日(岩川晋也撮影)
第99回全国高校野球選手権、日大山形戦に六回から登板、延長十二回まで無失点に抑えた明徳義塾の市川=8月9日(岩川晋也撮影)
 かつての甲子園は大黒柱のエースがひとりで投げ抜くのが当たり前だった。そのために肩や肘を壊す投手が続出し、再三世間の批判に曝され、一時期より苛酷な連投が減少したとはいえ、それでもこの種の根性論的投手起用は消滅してはいない。4年前の選抜でも済美の安樂智大(現楽天)がひとりで722球を投げ、大会後にしばらく投球不能の状態に陥った。安樂の件は海外でも話題になり、とりわけアメリカのメディアに手厳しく批判されている。

 このときもタイブレーク導入を訴える声が挙がったが、一部の著名なプロ野球OB評論家が異議を唱えた。「日本には日本、甲子園には甲子園の野球というものがある。苛酷な条件の中で投げ続けているからこそ、全国の野球ファンも野球少年たちも感動するのだ。アメリカの言うことだから、何でもかんでも正しいとは限らない」というわけ。私と旧知の仲の解説者など、「アメリカが偉そうに、日本の野球に口を出すな!」と憤っていた。

 こういう昔ながらの精神論が、現代の高校球児の胸中にもまだ宿っているらしい。現に福岡大大濠の三浦も報徳戦の最中、2度自らブルペンに走って、ベンチに戻されている。そんな場面が〝美しい光景〟としてマスコミに報じられるのもまた、日本ならではだ。

 だが、時代は確実に変わりつつある。一般のファンにはあまり知られていないものの、いまや社会人の都市対抗、大学や高校の明治神宮野球大会でもタイブレークが実施されている。あのWBCでもやっているのだ。物は試し、プロと高校野球で歩調を合わせてタイブレークをやってみたらどうだろう。プロの試合時間が短くなり、高校球児の健康維持にも役立つ。メリットは小さくない、と思う。