杉江義浩(ジャーナリスト)

 夏の甲子園。高校球児たちが全力で野球に青春をかける姿と、流すさわやかな汗には、誰もが無条件で感動する圧倒的な魅力があります。プロ野球をしのぐ人気で、今や国民的行事、日本の夏の風物詩であるとも言えます。

 戦前から続き、来年に100回目を迎えようかという伝統ある全国高等学校野球選手権大会ですが、プロ野球にはない問題点も、高校野球にはあることが、近年では指摘されています。

 一つは以前からも議論されてきたことですが、ピッチャーの連続登板問題です。限られた部員数の中で、各高校がエース級のピッチャーを確保するのは難しく、各校に一人いれば良い方でしょう。リリーフがいないので完投するしかなく、一人の選手の肩に大きな負担がかかります。準決勝、決勝ともなれば、連日連投を強いられる過酷なスケジュールとなります。

 プロ野球のように中2日開けて登板、という訳にはいきません。この連日連投が、成長期である高校生ピッチャーの肩に悪影響を与え、選手寿命を縮めるのではないかという声もあります。2013年より準々決勝と準決勝の間に休養日を入れ、3日連続登板という事態は避けられるようになりましたが、根本的な解決は難しそうです。

 もう一つは、なぜ真夏の炎天下、8月に屋根のない甲子園球場でやらなければいけないのか、という問題です。2011年には選手が次々に熱中症で倒れ、没収試合となるケースもありました。温暖化が進み、オゾンホールによって紫外線が強まっている現在、皮膚に与えるダメージを心配する声も聞かれます。
力投をみせる盛岡大付(岩手)の平松竜也選手=甲子園球場(佐藤徳昭撮影
力投をみせる盛岡大付(岩手)の平松竜也選手=甲子園球場(佐藤徳昭撮影
 これについては、水分をしっかり取っていれば熱中症にはならない。試合時間そのものは2時間あまりで半分はベンチにいるのだから、体調管理に影響はない。といった擁護派の意見もあります。いずれにしても高校生である選手たちの健康を考えた、賛否両論が飛び交うのが当然だと思います。

 ところが賛否両論どころか、問題にもしないメディアがあります。夏の甲子園大会を主催する朝日新聞社です。高校野球に関しては、ひたすら美談を感動的に新聞記事にします。朝日新聞にとって夏の甲子園は、販売促進のための「キラーコンテンツ(最大の目玉商品)」であり、批判することはタブーなのです。

 何事にも両論併記で、リベラルを自認する朝日新聞が、自社内にこんなタブーを抱えているとは、意外な盲点ですが、これほどまでに朝日新聞が高校野球に肩入れするのはなぜなのか。それは圧倒的なメリットが、高校野球から得られるからではないでしょうか。

 新聞社が、野球などの国民的スポーツを売り物にするのは、別に珍しいことではありません。読売新聞には読売ジャイアンツといった例を引き合いに出すまでもなく、今では多くのマスメディアが、スポーツの大会を主催したり後援したりしています。しかし、それらとは一線を画した新聞社にとって特別に有利な要素が、日本の高校野球には少なくとも三つあると私は考えています。