2017年08月13日 10:54 公開

米南部バージニア州シャーロッツビルで12日、白人極右集会に抗議する人たちの間に自動車が突入し、1人が死亡し19人が負傷した。これに先立ち市内では、極右集会に参加する白人ナショナリストたちと、抗議する人たちの間で衝突が相次ぎ、少なくとも15人が負傷した。同州知事は、白人至上主義者に「帰れ」「お前たちは愛国者とは程遠い」と強い調子で批判した。一方で、ドナルド・トランプ米大統領が白人至上主義者を特定して非難しなかったことを、共和党内からも疑問視する声が上がっている。

シャーロッツビル市警によると、抗議集会に突入した自動車は現場から少し離れた場所で発見され、運転していたオハイオ州在住のジェイムズ・フィールズ容疑者(21)は第2級殺人の容疑で拘束された。

ソーシャルメディアに投稿された動画では、大人数に取り囲まれ徐行している車両数台に、猛スピードで自動車が突入した後、猛スピードでバックしながら現場を走り去る様子が見える。目撃した一人は、この車が「いったんバックしてからまた突っ込み」、若い女性を「引き裂いた」と話している。

バージニア州のテリー・マコーリフ知事(民主党)は報道陣を前に、「今日シャーロッツビルに入ってきた白人至上主義者やナチスに伝えたい。我々のメッセージは単純で簡単だ。『帰れ』。この偉大な州はお前たちを歓迎しない。恥を知れ。お前たちは愛国者のふりをするが、お前たちは愛国者とは程遠い」、「お前たちは今日、他人を傷つけようとやってきて、実際に人を傷つけた。しかし私のメッセージははっきりしている。我々はお前たちより強い」と非難した。

マイケル・シグナー市長は、極右行進を「憎悪と偏見と人種差別と非寛容の行進」と非難し、死者が出たことに「打ちのめされている」と述べた。さらに,、「我々はマッカーシー主義も乗り越えた。人種隔離政策も乗り越えた。そして今回のこれも乗り越える」と表明した。またバージニアに、白人至上主義団体クークラックスクラン(KKK)を連想させる燃えるたいまつを持ち込む者たちは「歴史のごみためがふさわしい」と非難した。

ドナルド・トランプ米大統領も暴力を批判したが、「色々な側(many sides)」の憎悪と暴力を批判するにとどまり、白人至上主義者による暴力と特定しなかったため、一部の共和党議員からも問題視されている。

この日の極右集会は、米南北戦争で奴隷制維持のために戦った南部諸州軍のロバート・E・リー将軍の像の撤去計画に抗議するためのものだった。

州政府が非常事態を宣言し、市内のエマンシペーション(奴隷解放)公園で行われた極右集会を、警察は無許可で違法なものと発表。退去に抗議する参加者に催涙弾を使用し、一部は逮捕したという。

米メディア報道によると、南北戦争時の南部連合の旗などを掲げた集会参加者たちは、リー将軍の像撤去に抗議し、「お前たちに追い出されはしない」、「ユダヤ人に追い出されはしない」などと唱えていたという。ナチス式敬礼のようなポーズをとる参加者たちの姿もあった。

人種差別に対抗する「Black Lives Matter(黒人の命も大事)」運動などがこれに対抗して集まり、極右集会に抗議していた。

同日午後にはバージニア州警察のヘリコプターがシャーロッツビル南西の山林に墜落し2人が死亡したが、これは極右集会には無関係とみられている。

「大統領、悪は名指しを」

トランプ大統領は休暇中のニュージャージーで記者団に対し、「色々な側による、言語道断な憎悪と偏見と暴力の行使を、最大級に」非難すると発言。「憎悪と分断はただちに終わらなくてはならない」、「国を愛するアメリカ人としてひとつにまとまらなくてはならない」と述べた。

しかし大統領が「色々な側」の憎悪と暴力という表現を使い、白人至上主義者と特定しなかったことについて、民主党だけでなく共和党議員からも疑問視する声が上がっている。

コーリー・ガードナー上院議員(共和党、コロラド州選出)は、「大統領、悪は名指ししなくてはなりません。連中は白人至上主義者で、これは国内テロリズムでした」とツイートした

オリン・ハッチ上院議員(共和党、ユタ州)も同様に、「悪は名前で呼ぶべきだ。私の兄がヒトラーとの戦いに命を捧げたのは、ナチスの思想が国内でおとがめなしにまかり通るような事態のためではない」とツイートした

リー将軍の像撤去に抗議する「白人のため」の集会を、右派ブロガーのジェイソン・ケスラー氏が呼びかけ、白人ナショナリストたちがソーシャルメディアで広く参加者を募っていた。

「名誉棄損防止同盟」過激主義センターのオーレン・セガール所長は、ナオナチやKKKなど、様々な白人至上主義組織がシャーロッツビルに集まっていたと話す。

作家J・K・ローリングさんがツイートした写真には、ナチス・ドイツの鍵十字の旗を持って行進する参加者が写っている。

極右集会に対する抗議行動に参加したシカン・ラーさん(21)は、極右団体について「あの連中に主張などない。憎悪と暴力だけだ。これは魂の戦争だ」と話した。

シャーロッツビル市内では11日にも白人ナショナリストたちがバージニア大学キャンパス内を行進し、「白人の命も大事だ(White lives matter)」と繰り返しながら、たいまつを掲げていた。たいまつは、KKKのシンボルだと指摘する声もある。

シャーロッツビルは主にリベラル派が多い大学町で、同市のあるアルブマール郡の有権者の86%が昨年の大統領選では民主党のヒラリー・クリントン候補に投票した。市議会がリー将軍の像撤去を可決したことで、白人至上主義者の標的にされるようになった。

白人至上主義者の団体がナチス式敬礼でトランプ大統領の当選を祝う集会を開くなど、トランプ氏の当選によって全米の極右団体が勢いづいていると指摘する声もある。

(英語記事 Charlottesville: One killed in violence over US far-right rally / Charlottesville: Virginia governor tells white supremacists: 'Go home'