例えば、北朝鮮という小なる破綻国家に同胞を奪われたまま、ふつうに日常生活を送っていく、わたし自身を含めた日本国民とは一体、どこの誰だろうか。これが本当の日本人なのだろうか。

 小なる破綻国家というのは、まったく侮蔑ではない。人口は日本の6分の1前後のおよそ2千万人にすぎず、GDPは日本の約3百分の1、年間の国家予算は実に約1万分の1、そして独裁者の一族がどれほど潤っていても国民生活は天候次第で餓死者も出すほどに破綻している。

 その隣国に有本恵子さん、横田めぐみさんをはじめ何人を奪われているかすら分からず、しかし15年も前に金正日総書記が小泉純一郎総理(いずれも当時)に公然と拉致を認めていながら、依然として誰も取り返しに行かない、いや行けないと思い込んでいるのが、ありのままの日本である。

 それどころか、不肖わたしが参議院の予算委員会で拉致被害者の帰還をめぐって質問すると、足音高く委員会室を出ていく野党議員、それも有名な女性議員が複数いるのが傍聴席の国民に目撃されるのが日本国である。

 北朝鮮はこの日本をあからさまに侮蔑(ぶべつ)し、たった今、日本海の好漁場の大和堆(やまとたい)に粗末な漁船で現れ、稚魚をも根こそぎ奪い尽くす網で魚もイカも勝手に取り、日本の漁船どころか水産庁の違法操業取締船もまったく無視をしている。日本国民の漁家はやむを得ず、最近は北方の武蔵堆に漁場を移そうとしていると、その近くには北のミサイルを撃ち込まれる始末である。
長崎県五島市・福江島の南の海域で、浸水し傾いた北朝鮮籍の貨物船チョン・ゲン=1月12日(第7管区海上保安本部提供)
長崎県五島市・福江島の南の海域で、浸水し傾いた北朝鮮籍の貨物船チョン・ゲン=1月12日(第7管区海上保安本部提供)
 この小舟、マストに北朝鮮の国旗を掲げ、お尻には軍に所属することを朝鮮語で記している。つまり日本国憲法第9条の致命的な最後の一行、「国の交戦権は、これを認めない」の意味を、学校で教わらない日本国民よりも、はるかに良く理解している。

 敗戦後の日本は相手が国(外国)であり、軍をはじめ国の機関であれば、まさしく何をされても戦わないことを良く知っているのだ。

 だから海上自衛隊は何も対応していない。できない。海上保安庁は奮闘して800隻以上を追い払ったが、追い払うだけであり、再び同じ小舟も平然と押し寄せてくる。

 日本海の水産資源は生態系ごと破壊され続け、漁家の生活は根本的に脅かされている。

 わたしたちの日本は言霊の国である。

 敗戦を終戦と言い換え、「二度と戦わない」と言って済ませているために、どれほどの深刻、無残な現実を生んでいるのか。