2017年08月15日 15:20 公開

英国の空港や機内で酔って逮捕される乗客の数が、1年で50%増えている可能性がある。BBCの調査報道番組「パノラマ」の取材で分かった。

2016年2月~2017年2月にかけて、空港や機内で酔って逮捕された人数は合計387人。前年同期は255人だった。管轄内に主要航空のある20地域の警察のうち18地域の警察から、「パノラマ」が逮捕データを入手して判明した。

加えて、英民間航空各社の業界団体「エアラインズUK」の独自調査によると、回答した乗務員の過半数が、英国内の空港で酔った乗客による問題行動を目にしたことがあると答えている。

内務省は、空港や機内でのアルコール規制強化を「検討している」という。エアラインズUKは、乗客が自ら持ち込んだアルコールを機内で飲むことは違法にすべきだと主張している。

英国の航空乗務員組合ユナイトに加入している乗務員1万9000人を対象にした調査に、4000人が回答。そのうち5人に1人が身体的な暴力を受けたと答えている。

ヴァージン・アトランティック航空の客室乗務員マネージャーだったアリー・マーフィーさんは、勤続14年の後に昨年10月に退職した。マーフィーさんはパノラマの取材に対して、「私たちは空飛ぶバーのウェートレスにしか思われていない。乗客は私たちの胸に触ったり、お尻や脚に触ってくる。スカートの中に手を入れられたこともある」と話した。

英航空業界は2016年7月、問題行動を起こす乗客に対する自主的な行動指針を導入。ほとんどの大手航空会社や空港はこれに賛同した。これに基づき航空業界は空港の小売店に対して、免税の酒類を購入した乗客には機内で飲まないよう警告するよう求めた。また酔っているように見える乗客に酒を販売しないよう呼びかけている。

しかしパノラマの取材で、客室乗務員の4分の1以上がこの行動指針の内容を知らず、知っていても機能していると評価する人はわずか23%にとどまった。

匿名希望の一人の乗務員はパノラマに対して、「行動指針は役に立っていない(中略)毎日、毎週、毎月のように問題が発生している。主に免税店のアルコールが大きい問題だ」と話した。

マンチェスター空港は指針に署名して参加しているが、パノラマの記者が身分を隠して免税コーナーを訪れ、免税店「ワールド・デューティー・フリー」で買ったアルコールを機内で開けて飲んでも良いか尋ねると、店員は「正式には多分だけだけど、見逃してもらえると思う」と答えた。空港内の別の免税店では、店員は正しい回答をした。

「ワールド・デューティー・フリー」は番組に対して、問題に真摯(しんし)に取り組むつもりだと答え、「すべてのレジ、領収書、買い物袋に、最終目的地に着くまでは免税店で購入した酒類は開封してはならないと念押ししている」と指摘した。

ヴァージン・アトランティックやブリティッシュ・エアウェイズ、イージージェットなどが加盟するエアラインUKは、乗客が持ち込んだ酒類の機内消費は違法行為にするよう政府に呼びかけている。

空港内ならではのミニボトル

航空会社は機内で乗客に販売するアルコールの量を制限することができる。

格安航空会社Jet2はすでに、午前8時以前のフライト機内での酒類販売を禁止しているが、経営責任者のフィル・ウォード氏は、対策はさらに必要だと認める。

「(空港も)もっといろいろできると思う。小売店ももっといろいろできると思う。(空港内の)バーにビールの2リットル缶、免税店にカクテルやミニボトルが売っている。そんなものをあそこで売っている理由は一つしかあり得ない。町なかの小売店では売っていないのだから」

「それをこのまま変えないと言うのは、ありえない」

貴族院は今年に入ってこれまでに、空港での酒類販売規制強化を求める委員会報告書を発表している。酒類販売免許などを担当する委員会のマッキントッシュ委員長(ピッカリングのマッキントッシュ女男爵)は、「自発的な行動指針が機能している、もしくは近い将来にうまくいきそうだと示す証拠を何一つ得られなかった」と述べている。

貴族院報告書は、酒類販売免許の法規制から空港が除外されていることを問題視し、この除外規定を廃止するよう呼びかけている。内務省はこの要請を検討しており、「いずれ回答する」と話している。

空港事業者協会のキャレン・ディー最高責任者は、「空港が酒類をしっかり責任をもって販売していないという説は受け入れがたい。問題は酒類の販売そのものではない。アルコールのとり方を間違って飲み過ぎて、そして問題行動を起こすことこそ問題だ」と話す。

ディー氏は、酒類販売の規則をしっかり理解するよう小売業者や空港職員と協力して取り組んでいると話した。


読者が機内で遭遇した酔った乗客

「あまりに酔っぱらっていて、座席ベルトを締めるのに乗務員に手伝ってもらっていた乗客がいた。着陸時には、座るように何度言われても立ち上がる人たちもいた。本当にひどい罵詈雑言を耳にした。人種差別で性差別で、最悪だった」 ニッキー・ウェバーさん

「結婚前の花嫁と女友達たちの集団が乗っていて、フライトの間中ひどく口汚い悪態をつき続けていた女性がいた。着陸した時にこの人は通路を歩いてきて、私の息子の前でそれはもうひどい汚い言葉を怒鳴ったのが最悪だった」 シャロン・リチャーズさん

「飛行機が着陸態勢に入った時、若者たちがベルトを外して大騒ぎし始めた。後ろの女の子を蹴っているのを見たし、私も蹴られた。なので私も考えもしないで大声を出して、ベルトを締めろと怒鳴っていた」 タニア・チェンバースさん

「乗客のひとりはフライトが終わるころには、それはひどく酔っ払っていて、到着した時にはもう一人で降りることもできなかった。出発時間は午前8時より前だった」 ポール・シャーさん

「結婚前の新郎と男友達たちの集団のすぐ後ろに座っていた。この集団は空港で飲み始めていて、機内でも水のボトルから免税の透明な蒸留酒を飲み続けていた。客室乗務員はフライト中、アルコールを出さなかったし、小さい子供たちのいる家族の座席を移動させていた」 デイビッド・モールトさん

 


空中でのアルコール

  • 酔って搭乗したり機内で酩酊することは違法行為。最長2年の禁固刑を受ける場合もある
  • 酒類販売が認められている時間外の販売を禁止する法律は、英国の国際空港では適用されない。早朝便や深夜便の乗客相手の酒類提供が認められている
  • 2016年に英国の空港を通過した乗客は約2億7000万人。旅行者は毎年推定3億ドルを酒類に使う。これは小売売上総額15億ドルの約2割にあたる
  • 民間航空当局は、2012年から2016年にかけて乗客の問題行為が600%増えたと報告。この「ほとんどはアルコール関連」だという。認知件数が増えた一因は通報制度の改良だという

(出典:エアラインUK、英旅行小売フォーラム)

(英語記事 Drunk air passenger arrests up 50%