金委員長も「わが国に手出しすれば」と述べた上で、「米国も無事ではない」と断言した。それはそうだろう。前提条件を読めば当たり前の発言だ。北朝鮮外務省は「米国がわれわれへの軍事的冒険に手をつけるなら」と前置きした上で、「正義の行動で応じる」と語った。朝鮮人民軍戦略軍司令官も「グアム島包囲射撃計画案を慎重に検討」と発言した。あくまで「案を慎重に検討」と言うだけで、「攻撃を検討」とは言わない。
北朝鮮の弾道ミサイル発射を報じる街頭テレビに映った、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長=7月4日、東京・有楽町
北朝鮮の弾道ミサイル発射を報じる街頭テレビに映った、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長=7月4日、東京・有楽町
 北朝鮮の「米国への恐怖」がこの表現からよくわかる。ならば、なぜ過激表現を繰り返すのか。金正恩体制維持のためであって、米国と対話するためではない。対話を望むなら、もっと柔軟な表現をするからだ。

 トランプ氏は、金委員長を「米国への最大の脅威」と印象付け、支持率引き上げに利用した。反トランプの米紙ニューヨーク・タイムズも「若く気まぐれな核付き独裁者」と、金委員長批判の見出しを一面に掲げた。「トランプ作戦」の勝利だ。

 トランプ氏は8月10日に、国連安全保障理事会での北朝鮮制裁決議について「(効果は)それほど期待できない」と冷めた理解を述べた。安保理は8月5日に「北朝鮮の石炭、鉄鉱石など輸出の全面禁止」を決議した。これを受けて、メディアでは「北の石炭、鉄全面禁輸」と報じられた。だが、この見出しでは「輸入全面禁止」と誤解される。

 「輸出」と「輸入」では何が違うのか。「輸出」は北朝鮮だけが責任を負うもので、中国とロシアは全く責任を問われない。禁止されているのは北朝鮮の「輸出」であって、各国の「輸入」ではない。中国とロシアには「輸入」してもいいと解釈できる余地を残した。

 交渉関係者によると、米国は制裁決議に「輸入全面禁止」と「石油禁輸」を盛り込みたかったが、中ロは応じない。仕方なく「輸出全面禁止」で折り合いをつけた。今回の安保理決議には、次回は「輸入全面禁止」を盛り込む、との米国の意向が強くにじみ出ている。15日から中国政府は、北朝鮮産石炭や水産物の輸入全面禁止に踏み切った。ロシアとの立場の違いを示したとされるが、なお「抜け道」が憂慮されている。