なにしろ出演者は栄光のシルバースターのオンパレード。主役のシナリオライター役の石坂浩二(76)、浅丘ルリ子(77)、有馬稲子(85)、加賀まりこ(73)、五月みどり(77)、ミッキー・カーチス(79)、八千草薫(86)、山本圭(77)、藤竜也(75)など大物俳優は70~80代。だが、演技は申し分ない。

 さらに入居者の藤木孝(77)、山谷初男(83)、毒蝮三太夫(81)、伊吹五郎(71)、冨士眞奈美(79)などの個性派の演技に劣化は見られない。60年代から70年代にブレークした俳優、タレントたちがシルバー人生の苦悩と喜び、人生の終焉(しゅうえん)を演じる。やすらぎの人生を送った出演者のうちの1人である野際陽子(享年81)は、ドラマの進行と同時に他界している。
「やすらぎの郷」での一場面(テレビ朝日提供)
『やすらぎの郷』の一場面(テレビ朝日提供)
 共演している石坂浩二と浅丘ルリ子は、実際に夫婦だったが離婚している。2人は文京区の川口アパートメントの同じ間取りの上下の階に住み階段を作って行き来して、マスコミの目を欺いた。シルバー世代は、自分の人生と重ね合わせて、石坂と浅丘の結婚、離婚を思い浮かべる。

 一方、石坂と加賀まりことの交際は、当時の女性週刊誌のトップを常に飾っていた。スキャンダルの集中砲火の中を生き延びた加賀まりこの自由奔放さとたくましい人生をドラマに重ねてみる。

 芸能界では離婚、交際したカップルの競演を避ける不文律があるが、それも恩讐(おんしゅう)のかなたに…。視聴者とすれば、色眼鏡をかけてみるとより面白い。芸能界はまさに魑魅魍魎(ちみもうりょう)だ。出演者たちは過去にとらわれず静かに青春時代を振り返りながら、思い出を楽しんでいるように見える。

 そういえば五月みどりさんの「♪おひまなら来てよね…」が大ヒットしたっけ。

 現在の民放を見回すと、同じような顔に見えるテレビ芸人の独壇場だ。高齢者が見る番組がほとんどない。高齢者はNHKのニュース番組に大河ドラマや演歌番組、そしてワイドショーを見る程度で、見たい番組が見当たらない。その高齢者が『やすらぎの郷』の視聴率を支えている。若者はテレビよりネット、その一方で高齢者はテレビだ。テレビ局は視聴者を間違えている。