確かにシルバー世代に向けたドラマは皆無だ。だが、北大路欣也(74)、泉谷しげる(69)、志賀廣太郎(68)出演のテレビ東京の『三匹のおっさん』は高視聴率をたたき出した。
テレビ東京系「三匹のおっさん3」の制作発表に出席した左から志賀廣太郎、北大路欣也、泉谷しげる=2017年1月15日、東京・千代田区
テレビ東京系『三匹のおっさん3』の制作発表に出席した左から志賀廣太郎、北大路欣也、泉谷しげる=2017年1月15日、東京・千代田区
 シルバー世代の井上陽水(68)のコンサート会場は常に満席、陽水ファンは『氷の世界』『傘がない』をカラオケで熱唱する。演歌など全く歌わないしシルバー世代も多い。「やっと時間ができた、人生はこれからだ!」と、登山、自転車のロードレースに打ち込む団塊の世代も珍しくない。

 シルバー世代は消え行く人生の敗北者ではない。戦後の日本経済の復興を果たした60年代、そして70年代のバブル期を構築してきたパワー溢(あふ)れる勝者でもある。同じように『やすらぎの郷』の俳優たちは、時代を作り脚光を浴びた名優たちだ。「人生はこれからだ!」シルバー俳優たちからこんな声が聞こえてくる。

 『やすらぎの郷』は離婚と結婚などの冠婚葬祭、家族との絆、遺産、恋愛、認知症、死への恐怖…など、「老い」をテーマにしている。燃え尽きるまで生きる、貴重な人生のお手本がこのドラマにある。

 主題歌の『慕情』を歌う中島みゆきも良い。彼女の歌を聴くと体全体から躍動する力が湧いてくる。この主題歌が『やすらぎの郷』の側面を支え、勇気と希望を与える。

 このドラマは昼の時間帯で終わる番組ではない。高視聴率はテレビの意識を変える。シルバー世代が酒を飲み始める午後5時、6時の時間帯への出世も考えられる。

 『やすらぎの郷』のヒットの原因は、いろいろな側面から考えられる。その中でも大きいのは、戦前世代との世代交代だろう。50年から70年代にかけて少年期を過ごした世代は、ジャズを発見し、プレスリーのアメリカンポップスに目を丸くした。そしてビートルズの襲来、エレキに親しみ、GS(グループ・サウンズ)のザ・タイガースを生み、沢田研二に熱狂している。戦後世代は、欧米の音楽、映画、演劇を取り入れ、新しい文化と生活を構築してきた。

 彼らはいま、「やすらぎの世代」の真っただ中に生きている。『やすらぎの郷』ヒットの背景には、戦後の復興を突っ走った彼らの年齢を超越するたくましさがある。