海野素央 (明治大学教授、心理学博士)

 今回のテーマは「トランプの白人至上主義者擁護とバノン解任の意味」です。8月12日に発生した南部バージニア州シャーロッツビルでの白人至上主義者と反対派の衝突に関するドナルド・トランプ米大統領の「喧嘩両成敗」の発言は、米国社会及びホワイトハウス内の混乱を招きました。トランプ大統領の本音は、支持基盤の一角を成す白人至上主義者の擁護にあります。本稿では、支持基盤に対する同大統領の発言の影響とスティーブン・バノン首席戦略官兼大統領上級顧問解任の意味を探ってみます。

 NPR(公共ラジオ)、PBS(公共放送)及びマリストの共同世論調査(2017年8月14日-15日実施)によりますと、バージニア州での衝突を巡るトランプ大統領の対応に対して、27%が「十分である」と答えています(図表1)。トランプ大統領のコア支持層は約35%から40%ですので、彼らの中にも白人至上主義を名指しで批判しない同大統領の説明に不満を抱いている人が存在することが読み取れます。
 さらに、極右集会に抗議する群衆の中に白人至上主義者が運転する車が突っ込んだ事件に関して、約2割が「国内テロではない」と回答しています(図表2)。こちらもコア支持層の割合を下回っています。彼らの中には、今回の衝突事件を白人至上主義者による国内テロと理解している者がいるのです。
 これまでトランプ大統領の支持率は、低空飛行を続けながらも安定していました。ところがバージニア州で発生した衝突事件に対するトランプ大統領のコメントで支持基盤が揺らぎ、一部の支持層が離反する可能性は否定できません。

 トランプ大統領は一旦白人至上主義者を非難したものの、彼らを再度擁護する発言に戻りました。選挙期間中と同様、白人労働者、退役軍人、キリスト教右派及び白人至上主義者といった支持基盤を守る同大統領の姿勢に変化はありません。ただそれに伴うマイナス要因が発生しました。

 第1に、反白人至上主義の支持層を不快にさせたことです。繰り返しになりますが、一部の支持層がトランプ大統領支持から離れて行く可能性が高いです。

 第2に、トランプ大統領は大手企業のCEO(最高経営責任者)から構成された米製造業評議会と戦略・政策フォーラムの2つの助言機関を解散せざるを得ませんでした。助言機関のメンバーが、株主や消費者といったステークホルダー(利害関係者)から「人種差別者」のレッテル貼りをされ、企業イメージの低下を招くことを強く懸念して次々と辞任したからです。周知の通り、トランプ大統領は選挙期間中労働者層に強く訴えました。殊に、米製造業評議会は白人労働者に向けた製造業復活のシンボルであっただけに、そのダメージは大きいと言わざるを得ません。