前嶋和弘(上智大学総合グローバル学部教授)

 アメリカ南部バージニア州シャーロッツビルで8月11日から12日にかけて白人至上主義者のデモと反対派の衝突が起こした波紋は、これに対するトランプ大統領の対応の拙さもあって、一向に収束する気配がない。19日にはボストンで「言論の自由」を主張する若者らによる大規模な集会が開かれ、差別主義者との関連が指摘されたため、数千人規模の反対派が抗議するなど、対立はさらに拡大していく可能性もある。
8月14日、米ニューヨークのトランプタワー付近で、トランプ大統領を批判するプラカードを掲げ抗議する人(ゲッティ=共同)
8月14日、米ニューヨークのトランプタワー付近で、トランプ大統領を批判するプラカードを掲げ抗議する人(ゲッティ=共同)
 白人至上主義者のグループであるクー・クラックス・クラン(KKK)やネオナチはアメリカ社会の暗黒部を象徴するようなグループである。KKKは有色人種を夜に襲い、数々のリンチを繰り返してきた。ネオナチもユダヤ人虐殺を行った「ナチス」から名付けられているのは言うまでもない。

 KKKやネオナチというアメリカ社会の中で蛇蝎(だかつ)のように嫌われてきた白人至上主義者グループに対し、その主張に反対する人たちを同列に扱うトランプ大統領の「喧嘩両成敗」という主張は、アメリカ社会では受け入れがたいことである。

 トランプ氏もそのことは十分理解しているはずであろう。昨年の選挙戦中、白人至上主義団体のKKKのデューク元最高幹部との関係をきっぱりと否定していた。これは「白人至上主義者」のレッテルを張られたくないために他ならない。

 今回の事件については、トランプ大統領の言葉が二転三転した。事件直後の12日の記者会見でトランプ大統領は「憎悪や偏見、暴力を可能な限り強い言葉で非難する」などとあいまいな形で言葉を濁した。白人至上主義者を名指しで非難しなかったという批判が大きくなったため、14日には「人種差別は悪だ」とした上で、KKKやネオナチという名前を挙げ、白人至上主義者などを名指しで非難した。

 しかし、翌15日の会見では一転して「白人至上主義者らと反対派の双方に非がある」と「喧嘩両成敗」に至っている。「双方に非がある」と3回目の記者会見で発言は、原稿を読み上げた前日の会見とは異なり、アドリブであった。ただこの発言はあまりにも想定外でケリー首席補佐官ら近くの政権関係者がうつむいてしまった。