三浦瑠麗(国際政治学者)

政権発足以来の危機


 米トランプ政権が政権発足以来の危機に直面しています。8月12日に行われた白人至上主義者の集会に際して、反差別の立場からカウンター・デモを行っていた女性が死亡し、多数の負傷者を出した事件の扱いをめぐって政権批判が高まっているのです。

 トランプ氏のこれまでの暴言や政権内部の混乱とその深刻度が異なるのは、共和党の重鎮や、ビジネス界、一部の右派系メディアなど、トランプ政権に寛容とされた層からも批判が高まっているからです。

 問題の発端は、シャーロッツビルの議会が、米南北戦争時の南軍の総司令官であったロバート・E・リー将軍の銅像の撤去を決めたこと。その動きを阻止すべく、全米から白人至上主義者やネオナチ、黒人への暴力を主導してきたKKKなどの団体が終結しました。彼らは、KKKの伝統に則って松明を掲げて夜の街を行進し、ナチスのシンボルであったカギ十字の旗を掲げ、反ユダヤ主義を叫びました。そして、その中の一人が女性を自動車でひき殺したのでした。
米連邦議会内の南軍司令官リー将軍像の前を歩く観光客ら=8月17日、ワシントン(ゲッティ=共同)
米連邦議会内の南軍司令官リー将軍像の前を歩く観光客ら=8月17日、ワシントン(ゲッティ=共同)

どっちもどっち論


 近年稀に見る規模での白人至上主義者の集会、しかも、白昼堂々と行われた暴力によって全米での批判が頂点に達していた時、トランプ大統領は火に油を注ぐような対処をして事態を悪化させてしまいました(殺人行為に及んだ容疑者は逮捕され、差別主義団体の一連の行動について公民権法の適用を視野に入れた調査が開始されていますから、連邦政府全体の対応は常識的なものです)。

 その意味で、本件が深刻な問題へと発展したのは、ホワイトハウス中枢の致命的なミスのせいであり、端的にはトランプ大統領が差別主義者側と反差別主義者側の双方に対して、「どっちもどっち」と取れるような発言を繰り返したからです。