となると、残るのはとにかく危なそうなものを見つけて監視することだけである。米国の小惑星イニシアチブのもう1つの柱は「小惑星グランドチャレンジ」と呼ばれる計画で、これは民間や大学などを含めた多くの望遠鏡で、地球に近づく軌道をとる小惑星を監視しようという計画である。日本でも、NPO法人の日本スペースガード協会が、岡山県井原市にある「美星スペースガードセンター」で、小惑星の観測・監視活動を行っている。
 しかし、これらの監視にはお金と人材が必要である。小惑星は小さいため発見が難しく、大型の望遠鏡がどうしても必要になるが、それにも資金が必要である。さらに、小惑星は小さいために他の天体の引力による影響を受けやすく、軌道が変わりやすい。そのため、継続して監視を行うことが必要なのだ。無数にある小惑星を1つ1つ発見し、軌道を正確に決定するためには、全世界に望遠鏡を配置し、その望遠鏡のネットワークという形で観測していく必要がある。

 しかしその監視活動もまた、大変心細い状況である。小惑星グランドチャレンジもまた、先に述べた米国の宇宙開発計画の方針変更の影響を受ける可能性が高い。日本の監視活動も国ではなくNPO法人の手に託されているのが現状だ。危険な小惑星の監視ですらおぼつかないというのが世界と日本の現状なのである。

 さらに、監視をしたからといって、それが小惑星衝突を直接防げるわけではない。実際に小惑星の軌道を特定し、地球衝突の可能性が大きいと判断されてから、いかに人的・物的被害を最小にするのか、その明確なシナリオはまだない。例えば、危険な小惑星を発見したらどこへ報告するのか、誰がそれを危険であると宣言するのか、国がどう対応すべきなのか。考えるべきこと、決めるべきことは山ほどあるにも関わらず、全く手がつけられていない。

 このような現状を変えようという試みも、科学者を中心としたグループで行われている。5月15日から19日まで、東京・お台場にある日本科学未来館で、「地球防衛会議」(PDC)と呼ばれる会議が開催された。今年で5回目になるこの会議は大きな特徴がある。実際に小惑星が地球に衝突するという想定(シナリオ)をもとに、科学者や市民がどう対応するかを実際にグループに分かれて討議、問題点を洗い出すというものだ。今回は架空の小惑星「2017 PDC」が東京近辺に衝突する可能性があるというシナリオをもとに、8つのグループに分かれた討議を行い、それぞれの成果が発表された。