一方、日本政府は、国民に当事者意識を植え付けることについては、かなり真剣になったようである。話題になっている全国瞬時警報システム(Jアラート)の問題である。

 安倍首相は、談話で「ミサイル発射直後からミサイルの動きを完全に把握して」いたことを明らかにした。北朝鮮が関係国の目をグアム方面にくぎ付けにしようとしたなかで、その陽動作戦に惑わされず、かつ早い段階で日本に落下しないことも分かっていたということで、日本にそこまでの情報力があったのは大事だったと思う。

 しかし、今回の問題を通じて議論の必要性が明らかになったのは、日本にミサイルが落下しないことが明白なのに、どこまで国民を巻き込むのかということだ。ミサイルの発射が午前5時58分で、Jアラートが12道県に伝えられ、新幹線などが運転を見合わせたのが6時2分、太平洋に落下したのが同12分とされる。そして、北海道のえりも町教育委員会が児童に自宅待機を要請したのは、落下したあとの6時20分ということだ。日本政府は、日本に落下しないと分かっていたのに(だから破壊を命令しなかった)、いろいろな措置がとられるのを黙って見ていたわけである。
北朝鮮のミサイル発射の影響で、JR北海道では各方面への列車に遅れと運休が発生した=8月29日、JR札幌駅(高橋茂夫撮影)
北朝鮮のミサイル発射の影響で、JR北海道では各方面への列車に遅れと運休が発生した=8月29日、JR札幌駅(高橋茂夫撮影)
 未完成のミサイルが日本上空を通過するわけだから、たとえ日本領土に向けたものでなくても、破片の落下など万が一の心配があることは分かる。しかし、オオカミ少年の寓話(ぐうわ)にあるとおり、常に国民を巻き込んでいては、いざというときに冷静な行動がとれなくなる。慌てふためく日本国民を見て、日本上空を通過させるのが効果的と、北朝鮮が判断しても困る。

 Jアラートの発動は、政府がミサイルの破壊を命令するとき(日本に向かうミサイルだと判断したとき)など、限定的なものにすべきではないだろうか。北朝鮮によるミサイル発射が今後も頻繁にくり返されることが予想されるだけに、余計にそう感じる。