佐久間大輔(弁護士)

 「特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)」は、政府が2015年の通常国会に提出した労働基準法改正案に含まれています。この制度では、年収要件と職務要件を満たす労働者は、労働時間、休憩、休日および深夜の割増賃金に関する規定が適用されなくなります。そのため、労働組合や過労死の遺族などからは「残業代ゼロ法案」とか、「過労死促進法案」と批判されています。
厚生労働省前で「残業代ゼロより過労死ゼロを」とシュプレヒコールをあげる労働組合関係者たち=2015年1月16日(小島清利撮影)
厚生労働省前で「残業代ゼロより過労死ゼロを」とシュプレヒコールをあげる労働組合関係者たち=2015年1月16日(小島清利撮影)
 それでは、高度プロフェッショナル制度に当てはまるのはどのような労働者なのでしょうか。2つの要件について説明します。

 まず、年収要件は、改正案では年間平均給与額の3倍の額を相当程度上回る水準と定められており、これは年収1000万円以上が想定されています。

 職務要件は、高度に専門的な知識が必要とされ、その職務の性質上、労働に従事した時間とその成果との関連性が高くないと認められる業務をいいます。例えば、金融商品の開発・ディーリング業務、企業・市場等の高度なアナリスト業務、事業・業務の企画運営に関する高度なコンサルタント業務、研究開発業務等が想定されています。

 労働時間規制が適用除外されてしまうと長時間労働になり得るので、企業側はこれを防止するために健康・福祉確保措置(セーフティーネット)をとることが求められます。

 改正案では、下記3つのいずれかを労使委員会で決議することになっています。

① 休息時間(勤務間インターバル)と1カ月における深夜労働の回数制限

② 1カ月または3カ月における健康管理時間の上限設定

③ 4週間を通じ4日以上かつ1年間を通じ104日以上の休日

 ③が選択されることが多いと想定されますが、そうであれば1年間の労働日は261日(うるう年は262日)となり、極論すると「1日24時間働いても良い」のですから、年間6264時間働くことが可能となります。これではセーフティーネット足り得ないですし、そもそも「規制を撤廃するのならば長時間労働防止策を講じなければならない」という制度そのものが本末転倒です。

 事実、労働政策研究・研修機構「仕事特性・個人特性と労働時間(労働政策研究報告書No.128)」(2011年)によれば、通常の勤務時間制度で働いている非管理職のうち月間のサービス残業時間が60時間を越える者の割合は5・5%であるのに対し、裁量労働制の非管理職は19・7%、時間管理のない管理職は25・2%です。また、時間で見ると、通常の勤務時間制度で働いている非管理職の月間サービス残業時間平均は12・2時間であるのに対し、裁量労働制の非管理職は32・5時間、時間管理のない管理職は36・2時間となっています。