それゆえに、北朝鮮問題に関するロシアの立場は米中の陰に隠れることが多く、「忘れられたプレーヤー」とまで言われてきた。

 しかし、ロシアの態度は常に不変というわけでもない。例えば、北朝鮮が2006年に初の核実験を行った際、ロシアはこれを厳しく非難し、北朝鮮に対する武器禁輸措置に踏み切った。また、日本が米国とともに進めているミサイル防衛システムの開発についても、北朝鮮のミサイル脅威を考えればある程度は仕方ないとして、欧州へのミサイル防衛システム配備とはやや異なるトーンで接してきたことも注目される。

 これに対して昨今の朝鮮半島を巡る軍事的危機に際しては、ロシアは以前よりも北朝鮮寄りの立場を示している。例えば、今年7月に北朝鮮がICBM「火星14号」を2回連続で発射した際には、同ミサイルが2800キロ(1回目)および3700キロ(2回目)という超高高度に達したことから、実際の最大射程は6700~1万キロ程度に達するであろうと周辺諸国は推測した。これに対して、ロシアは自国の弾道ミサイル防衛システムの観測結果としてこれよりもずっと低い数値を発表し、北朝鮮のミサイルはICBMではないと主張。この「結果」と称するものを国連代表部に配布させ、北朝鮮非難のプレス向け決議の発出を阻止するという挙に出た。
8月17日、ロシア・ウラジオストク港に入港する北朝鮮の貨客船「万景峰」(共同)
8月17日、ロシア・ウラジオストク港に入港する北朝鮮の貨客船「万景峰」(共同)
 また、ロシアは2013年ごろから日米のミサイル防衛協力にも懐疑的な姿勢を示すようになり、2015年版「国家安全保障戦略」では欧州だけでなくアジア太平洋のミサイル防衛を戦略的安定性の既存要因に初めて含めた。最近ではプーチン大統領が北方領土における軍事力強化を、朝鮮半島における米の高高度ミサイル防衛システム(THAAD)への対抗措置と位置付けたり、ロシア外務省が日本の地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」導入を非難するなど、かつてとは大きく態度を変えてきている。

 このようなロシアの姿勢変化は、主に次のような要因によって説明されよう。

 第1に、ウクライナ危機などをめぐって対米関係が極度に悪化した結果、ロシアは世界の各地で米国の対外政策を妨害しようと試みるようになった。第2に、北朝鮮の核・ミサイル能力の向上によってこれまでは比較的ローカルな問題であった北朝鮮問題がグローバル化し、ここにおいてロシアの存在感を示すことへの誘因が強まった。そして第3に、西側との関係が悪化することでロシアの対外政策における中国の比重が高まり、中国と安全保障上の歩調を合わせること(あるいはそのように振る舞うこと)の必要性が高まった。特に今年春ごろの時点では、米国のトランプ政権が米中接近によって北朝鮮問題の解決を図ったこともあってロシアが置き去りにされる懸念を抱いていた節もあり、対中協調が一層必要とされたのだと思われる。