三船恵美(駒澤大法学部教授)

 「核保有国として認めろ」という北朝鮮の主張が、現実味を帯びてきた。
BRICS首脳会議が閉幕し、記者会見で手を振る中国の習近平国家主席=9月5日、中国福建省アモイ市(共同)
BRICS首脳会議が閉幕し、記者会見で手を振る中国の習近平国家主席=9月5日、中国福建省アモイ市(共同)
 残念なことに、北朝鮮の核・ミサイル開発問題をめぐり、行き詰まりをみせる国際社会がいくら中国に期待を寄せても、中国が「平和的な方法と全関係者による直接対話を通じてのみ解決されるべき」という姿勢を崩すことはない。核実験翌日の9月4日に採択された新興5カ国(BRICS)首脳会議の共同宣言「アモイ宣言」にも、それが示されていた。

 中国は、北朝鮮の核・ミサイル問題を米日欧の経済制裁や国際的な圧力では解決できない、と考えている。2016年1月に4回目の核実験を行った直後、北朝鮮の朝鮮中央通信は、イラクとリビアを「国際社会の圧力で自ら核を放棄したために、破滅の運命を避けることができなかった」と批判していた。イラクのフセイン元大統領やリビアのカダフィ大佐の「なれの果て」を知っている北朝鮮の金正恩政権と軍が、米日欧の要求通りに核を放棄したりはしない、ということを中国は承知している。中国はCVID(完全かつ検証可能で後戻りできない核放棄)が「非現実的な目標」であるとみている。
 中国は北朝鮮をコントロールできていない。しかし、中国ほど北朝鮮に影響力を及ぼすことができる国がないことも事実である。そのことが、国際社会における中国の外交プレゼンスを高めてきた。したがって、中朝間の対立につながる国連制裁決議など、国際社会による対北朝鮮制裁の枠組みに中国が真摯(しんし)に取り組むはずがない。中国が北朝鮮へ及ぼせる影響力を制限することになれば、また、中国と北朝鮮の「軋轢(あつれき)」が「対立」へ発展すれば、それは中国の国益にならない。

 これまで通り、国連などによる多国間アプローチには、中国とロシアによって「抜け道」が作られていくことになるであろう。

 とはいえ、「習近平体制下の中国」と「金正恩体制下の北朝鮮」の関係がうまくいっているわけではない(「習近平体制下の中国」と「金正恩体制下の北朝鮮」の2国間関係だけでなく、江沢民系の故徐才厚が牙城としていた旧七大軍区時代の北朝鮮と隣接する旧「瀋陽軍区」・現在の五大戦区に編成された「北部戦区」と、習近平勢力との中国内の利権に絡む政治対立構図が、「習近平体制下の中国」に従わない「金正恩体制下の北朝鮮」の関係構図の根底の一部にあることは、言うまでもない)。