国連安全保障理事会の新たな制裁決議に基づき、中国が8月15日から実施した対北朝鮮禁輸を受けて、中国メディアは、中朝国境に架かる橋の上で海産物を載せて中国側に入ろうとするトラックを拒否した中国側通関の報道を「宣伝」した。しかし、国連などの統計によれば、北朝鮮の約9割強の貿易相手国は中国であり、そのうち約1割が海産物である。その海産物の禁輸を「パフォーマンス以上のレベル」で中国が実際に行っているのであれば、北朝鮮の中国に対する反発はもっと激しいものになっているはずではなかろうか。

 9月1日に中国吉林省の長春で開幕された国際展示会では、日本や韓国など110以上の国と地域の企業とともに、北朝鮮からも30社以上が出展していた。そこでは、国連制裁決議で輸出が禁止されているはずの海産物の乾燥ナマコも売られていた。
 中国は、「国連や米国に対する協調のパフォーマンス」を内外へ、特に米国へ「宣伝」している。しかし、それが厳密に実施されているかは、疑わしい。

 「トランプ米大統領が明確な対北朝鮮外交・安全保障政策をもたないままに、北朝鮮を挑発している」と中国は見ている。米朝両国が「偶発的な衝突」に突入しないように、中国とロシアは、米朝両国を抑制するような中露協調外交を強化していくことを明らかにしている。

 ただし、中国はロシアの動きにも注視している。中国の「一帯一路」構想の港湾戦略を据えたベンガル湾沿岸国でロシアが軍事外交を積極的に展開する近年(この点は拙著『米中露パワーシフトと日本』〔勁草書房、2017年〕を参照されたい)、中露の北朝鮮政策は海洋戦略も含んでいる。ロシアとの「競合と協調」のバランスを図りながら、中国は北朝鮮の地政学を「氷のシルクロード(北極海航路)」構想においても位置づけて、「北朝鮮をめぐる対話・協議による大国外交」を主張していくであろう。このままでは、アジア太平洋の秩序形成におけるパワーシフトが、ますます中国優位へと加速してしまうことになる。米国が中国頼みの北朝鮮政策を転換すべき時期にきていると、日本はもっと声を高めていくべきではなかろうか。