礒﨑敦仁 (慶應義塾大学准教授) 
澤田克己 (毎日新聞記者、前ソウル支局長) 

 核実験に関する北朝鮮の発表にも、金正日国防委員長と金正恩国務委員長のスタイルの違いが表れているのだろうか。あるいは核開発が進展してきたことで、金正恩時代の北朝鮮は自信を深めているのかもしれない。北朝鮮がこれまで6回にわたって行った核実験についてまとめてみると、そんな印象を受ける。
平壌の金日成広場で行われた軍事パレードを観閲する金正恩氏(右から3人目)と金正日総書記(右端)=2010年10月10日(新華社=共同)
平壌の金日成広場で行われた軍事パレードを観閲する金正恩氏(右から3人目)と金正日総書記(右端)=2010年10月10日(新華社=共同)
 金正日時代に行われた2006年と09年の2回と、それ以降では『労働新聞』での核実験の報じ方などに大きな違いが見られるのである。金正日時代には核実験の成果を誇りつつも、最高指導者が実施を指示したことや、米国への敵対的な言質が特筆されてはいなかった。ところが金正恩時代になると、『労働新聞』での報じ方が全般的に派手なものとなる。同時に、米国の「対北朝鮮敵視政策」への対応であることが明確にされるようになった。そして2016年以降は、金正恩氏の命令書への署名に基づいて実施されたという報じ方が出てきた。金正恩氏の命令書というのは、新型ミサイルなどでも出てくる小道具となった。

 北朝鮮の発表からは、核実験の回数を重ねることによって「自主権と生存権確保のためだ」という理論化が進んだことがうかがえる。ただ、やはり最高指導者の違いという要素は無視できない。金正恩氏が自らを前面に押し出すのは、核実験によって自らの権威付けを図ろうという意図もありそうだ。

 6回目となる今回の核実験では、実施直前に金正恩氏が参加する朝鮮労働党政治局常務委員会で国際情勢に対する分析や評価を行い、そのうえで大陸間弾道ミサイル(ICBM)搭載用水爆の実験をするかの討議が行われたと発表された。そのうえで金正恩氏が命令書に署名したのだという。この点は、正当な手続きを踏んでいることをアピールしようとする金正恩氏の特性を反映したものである可能性がある。ある北朝鮮の外交官によれば、常務委員5人が会同している写真が公開されることは異例だが、党・国家の重要決定であることを示しているという。

 9月3日に行われた6回目の核実験について、包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CTBTO)の発表した地震波の規模はマグニチュード6.1。防衛省はこれを基に、爆発規模(TNT火薬換算)を160キロトンと推定した。広島に投下された原爆の10倍超で、北朝鮮の主張通り水爆だった可能性が強まっている。