津止正敏(立命館大産業社会学部教授)

 「冷遇・衰弱・不衛生」「長寿嘆く20万人寝たきり老人」-これは日本で初めての介護実態調査(全国社会福祉協議会主催)の結果を報じた1968年9月14日の全国紙朝刊記事の見出しだ。日本初の調査報告、いまであれば1面トップを飾ってもおかしくないビッグニュースかもしれないが、当時は社会面で人気の4コマ漫画の下にたった3段組の記事として扱われた。
(iStock)
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 当時の介護問題に対する社会の関心度合いはこのようなものだったのだろう。「介護は家族がするもの」ということを誰もが当然のように受け入れて、そのことを疑う余地すらなかった時代だ。特別養護老人ホームは身寄りがない低所得の高齢者を対象として、全国にわずか4500床しかなかった。介護者は、子供の配偶者(ほとんどが嫁)が49%超とほぼ半数を占め、次が配偶者(大部分が妻)で26%、3番目が娘で14%と、9割以上が婦人の肩にかかっている、と報じられた。この時代、介護する人は「若くて体力もあり、家事も介護も難なくこなし、介護に専念する時間も十分にあって、何より家族の介護を担うことを自然と受け入れている」というような同居女性、とりわけ専業主婦をモデル化したものだった。

 あれからほぼ半世紀が経過し、介護の世界は激変した。前述した「嫁・妻・娘」という介護者モデルの劇的な変容がその最たるものだ。今年6月に公表された「国民生活基礎調査」を見て、つくづくそう思う。この調査は毎年実施されている恒例のものだが、3年ごとに介護の項目の入った大規模調査を行っており、今回のものがそれにあたる。

 主な介護者をみると、要介護者との「同居」は6割を切った(58・7%)。「別居」して通いながら介護する家族は12・2%で、「事業者」「不明」というのもそれぞれ13・0%、15・2%となっている。在宅の介護実態はますます複雑化しているようだ。「同居」の主な介護者の、要介護者との続柄をみると、「配偶者」が25・2%で最も多く、次いで「子」が21・8%。「子の配偶者」は1割を切って9・7%となっている。また、「同居」の主な介護者を性別にみると、女性が66・0%だが、男性も34・0%と文字通り主な介護者の3人に1人を占めるようになった。

 「老老介護」の実態が一段と進んだというのも今回の調査結果で明らかになった。介護する人もされる人も「65歳以上」という世帯が半数を超え(54・7%)、ともに後期高齢者である「75歳以上」という世帯も30%を超えた(30・2%)。「60歳以上」同士に至ってはなんと7割を超えている(70・3%)。もう在宅での介護実態は「老老介護」そのものであるといっていい。さらに、夫婦間での介護となればこの実態はより先鋭化している。