本来、介護現場の人材不足は慢性的だったが、「募集をしても誰も来ない」という厳しい状況になったのは、第2次安倍内閣の発足以降だ。求人倍率が上昇して求職者が仕事を選択できるようになり、介護職の希望者は激減した。さらに2000年後半の世界不況以降、国の失業者対策で介護は雇用政策に利用されるようになり、介護福祉士の専門学校は入学定員の半分を割るという絶望的な状態になった。

障害者施設殺人で多くの報道陣が集まる「津久井やまゆり園」=2016年7月27日、相模原市(古厩正樹撮影)
多くの報道陣が集まる「津久井やまゆり園」
=2016年7月27日、相模原市(古厩正樹撮影)
 いわば介護は専門職ではなく、失業者のセーフティーネットという状況が続いている。実際、多くの介護施設では介護の「か」の字も知らない人物が介護職としてサービス提供する現実があり、本来は高齢者の命を預かる仕事だったはずだが、職員の質の低下は底なしとなっている。今回のように死をともなう事故、事件が起こることは、もはや関係者の多くが予想していた事態だった。

 介護業界としては数々の凄惨(せいさん)な事故、事件に対する改善はなにもされていない。改善どころか、外国人技能実習制度で外国人介護職の大量受け入れることが決まり、刑務所出所者への就労支援で介護を重点分野にする事業が行われるなど、混乱にくさびを打つような人材確保の対策が、続々と繰り広げられている。

 多くの事件や事故が象徴しているように、介護人材の質の低下は目を覆うレベルで、明らかに限界まで達している。そんな深刻な状況下で、地域では介護が必要な高齢者を65歳以上が介護する「老老介護」が拡大しているのだ。

 総務省国民生活調査(2013年)によると、自宅で暮らす要介護者と主な介護者が65歳以上の世帯の割合は51.2%、介護者と要介護者が75歳以上「超老老介護」の世帯の割合は29%と、在宅介護者の半数以上が老老介護だ。65歳以上の介護者が夫や妻、親の介護をする老老介護は、介護者自身の体力が低下する中で体力的、精神的な負担は大きい。

 介護者は自宅に閉じこもりがちとなり、大きなストレスを抱える。要介護者が認知症ならば徘徊(はいかい)などの問題行動が次々と起こり、介護者はどんなに疲れていようと常に目が離せない。要介護認定の理由で、最も多いのは認知症だ。介護者のストレスが大きく、ストレスや加齢から介護者自身も認知症になってしまったりする。要介護者、介護者の両者が認知症を患う認認介護は、現在大きな問題となっている。