東京五輪バブルを前にして活況を呈する不動産売買の“間隙”に潜り込んで、巨額のカネを騙し取る。そうした詐欺師は「地面師」と呼ばれる。裏社会で暗躍する彼らの存在が明るみに出た。その被害者は、大手住宅メーカー「積水ハウス」だった。【取材・文/伊藤博敏(ジャーナリスト)と本誌取材班】

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 大手住宅メーカー「積水ハウス」が8月2日に公表した「分譲マンション用地の購入に関する取引事故につきまして」と題したプレスリリースが、不動産業界に衝撃を与えた。
(iStock)
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〈当社が分譲マンション用地として購入した東京都内の不動産について、購入代金を支払ったにもかかわらず、所有権移転登記を受けることができない事態が発生いたしました。顧問弁護士と協議のうえ、民事・刑事の両面において鋭意対応しております〉

 土地の価格は70億円、そのうち63億円をすでに支払っているとある。つまり積水ハウスは63億円の資金を投じた土地を取得することができなかった。“何者か”に騙し取られたのである。

 五反田駅から徒歩3分の一等地にあり、600坪がまとまって存在したこの土地は、長く不動産業界では有名な注目物件だった。

 坪単価は1000万円以上、東京五輪を見越した都心一等地の値上がりで100億円にも達すると見込まれる“金のなる土地”──70億円で買えるなら積水ハウスとしては出色の物件だったはずだ。積水ハウスは仲介の不動産会社を通じて“土地所有者”から購入する形を取った。4月の売買契約時に手付金として15億円、6月1日に所有権移転の登記申請を行なう際に48億円が支払われた。残りの7億円は申請完了後に支払う予定だったという。

ところが、ここで予想だにしない事態が起こる。申請から8日後の6月9日、「所有者側の提出書類に真正ではないものが含まれていた」との理由で申請が却下されてしまったのだ。事態を告げられた積水ハウスの関係者は青ざめたという。その日以降、“土地所有者”とは完全に連絡が途絶えた。

 いったい何が起きたのか。積水ハウス側との取引の場に現われた土地所有者は、赤の他人がなりすました「偽者」で、提出された印鑑登録証明書もパスポートも、なにもかも「偽物」だったのである。そしてその赤の他人は、63億円とともに消えた──。