「念のため、銀行通帳のコピーを要求したんだけど、用意できなかったのか、話は流れた。その後、彼女が不動産関係者の間で『池袋のK』と呼ばれる有名な地面師であることが発覚した」(不動産業者)

 地面師とは、本来の所有者のあずかり知らないところで所有者になりすまし、土地の売り手となって購入代金を騙し取る不動産詐欺師である。

 今回の事件では、なりすまし実行犯のKだけでなく、計画全体をとりまとめたもう一人の地面師が背後にいたと見られている。積水ハウスとの交渉の場にも同席していたという不動産ブローカーだ。

「不動産会社に顔がきき、金融犯罪で逮捕されたこともある。近頃は金に困り、親しい人間に無心しながらサウナ暮らしを続けていたが、なぜか最近、数千万円にものぼる借金を完済し、都内に高級マンションを3軒も購入したと聞いている。鞄にはユーロ、ドル紙幣、キャリーバッグには日本紙幣をぎっちり詰め込んでいるそうだ」(前出・不動産業者)

 おそらくこの男女が、事件の“主演兼脚本家”と目されているのである。

 4月24日に交わされた契約には、偽造書類を携えた「池袋のK」と“相棒”と思われる不動産ブローカーのカップル、そして彼らの委任弁護士が同席していた。一方、積水ハウス側には司法書士と弁護士、仲介業者の代表が同席した。
(iStock)
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 巧妙な手口とはいえ、なぜ積水ハウスは見抜けなかったのか。「詳細についてはコメントできません。開示した資料の通りです」(広報部)と口は重く、詳しい経緯はいまだに謎である。

 一方、所在不明だったSさんはその後、亡くなったようで、事件発覚後の6月24日に、弟とされる大田区の男性2人に所有権が相続移転されている。売買契約を結ぶはずだった所有者とは別の人物に所有権が移転したため、積水ハウスがこの土地を手に入れられる可能性は極めて低くなった。今後はいかに損害金を回収できるかが焦点となる。

 前述の通り、地面師事件の難しさは、なりすまし犯以外はどこまでがグループに加担しているかが分からない点にある。「私も騙された」と被害者を装う関係者の中に、実際には地面師側に付いている人間がいる可能性は大いにあるのだ。

 担当する警視庁捜査2課は、なりすまし犯の「池袋のK」の所在すら、いまだ掴めていない。全容解明までの道程は長い。

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