山田順(ジャーナリスト)

 ついこの前まで「忖度(そんたく)」と言っていると思ったら、今度は「大義、大義」とやかましい。解散・総選挙がほぼ本決まりとなった途端、野党サイドは不満たらたらで、「大義なき選挙」と言い始めた。

 共産党の小池晃書記局長は9月16日のツイッターで、「臨時国会冒頭解散 いったい何を問うのか。もともと『大義』とは縁もゆかりもない政権だとは思っていたがここまでとは」と発信した。18日には、小池百合子都知事が「何を目的になさるのか大義がわからない」と発言した。

 テレビでも、多くのコメンテーターが同じようなことを言っている。そこで問いたい。総選挙には大義が必要なのか? 大義がないと総選挙をやってはいけないのか?

 「大義」の次に野党サイドが言い出したのが、「政治空白」や「疑惑隠し」、「自己保身」だ。これは、民進党の前原誠司代表が言い出した。17日の民進党本部での会見で、前原代表はこう述べた。
常任幹事会で挨拶する民進党の前原誠司代表=19日、東京(斎藤良雄撮影)
常任幹事会で挨拶する民進党の前原誠司代表=19日、東京(斎藤良雄撮影)
 「北朝鮮が核実験やミサイル発射を行う状況の中で、『本気で政治空白をつくるつもりなのか』と極めて驚きを禁じえない。森友問題や加計問題について国会での追及から逃げるため、国民の生命・財産そっちのけで、まさに『自己保身解散』に走っているとしか言えない」

 解散・総選挙になると、毎回、なんらかのネーミングを施さないといけないのは、「バカヤロー解散」以来の日本の「美しき伝統」だ。しかし、ここまでの野党側のネーミングは、情けないほど味も素っ気もない。「大義なき解散」「政治空白解散」「疑惑隠し解散」「自己保身解散」では、直球ばかりではないか。

 これでは、米国のトランプ大統領の方がよほどうまい。彼から見たら「頭のおかしなクソガキ」にしか思えない、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長を「ロケットマン」と名付けてしまった。本来ならロケットではなく「ミサイルマン」だろうが、ロケットマンと漫画のキャラ扱いしたことで、「トータリーデストロイ」(完全なる破壊)の本気度が伝わってくる。

 だいたい、今回の解散を野党サイドが批判する資格などない。なにしろここ数カ月、彼らは森友・加計の両学園問題を追及し、「安倍首相は信用できない」と、解散・総選挙を強く求めてきたからだ。

 例えば、7月に自民党が東京都議選で惨敗したとき、民進党の蓮舫前代表は「(この結果を受けて)解散に追い込む」と気勢を上げた。これに同調したのが社民党の又市征治幹事長で、「内閣改造でごまかそうとしているが、解散・総選挙を打たざるをえないところに追い込むことが大事だ」と言ったのである。

 それがいざ解散となったら、今度は「大義がない」「疑惑隠し」だと解散そのものを批判するのだから、あきれてものも言えない。本来なら「よくぞ解散してくれました。これで国民に信を問えます。もう疑惑からは逃れられませんよ」くらいのことを言わなければならない。大義がないのは、野党サイドではないだろうか。