「売れますよ、ふふふ」


 突如として、朝日新聞の記者を名乗る女性、守記者から電話を受けたのは2月10日。

 私は不在だったのですが、「かけ直せ」との伝言がありました。このへんの尊大さがいかにも朝日らしい。もちろん、かけ直す義理はありませんが、「『呆韓論』のことで」という話だったので、著者への取材の申し込みなどかもしれない、と折り返し電話したわけです。

 守記者は電話に出るとすぐさま、

 「『呆韓論』という本ですが、売れてますか」と聞いてくる。

 「売れていますが何か?」

 「現在、何万部ですか?」

 「20万部ですが」

 「すごいですね、先日聞いたときはまだ……それがもう20万部ですか! それはなぜ売れているんでしょうか」

 あまりに矢継ぎ早にどんどんと聞いてくるため、どんな記事で、何のために聞かれているかも、こちらとしてはわからない。

 そこで、「これは取材なんですか」と聞いたところ、「まあそう、ふふふ、ですね」と、のらりくらり。

 朝日新聞が、「韓国に関する本が売れているという事実」から、どのような記事を書こうとしているかは、だいたいこちらも想像がつきます。

 ですから、「取材ならきっちり取材として受けたいのですが。どのような記事ですか?」と聞いたのですが、次々と聞いてくる。

 「韓国や中国に関する本が売れているという記事なのですが、どのようなことで売れているか、その理由を入れろと言われて。読者からの感想などがあれば入れるように上司から言われまして」

 それを聞いて私は、「売れている理由」を記事に盛り込むことで、「取材した」免罪符にするつもりなんだなと考えました。ストーリーはすでにできていると思ったわけです。

 「角度のある記事ではない」

 彼女の質問に答える義務はまったくないので答えなくてもよかったのですが、放置して勝手なことを書かれても困ります。そこで次のように言いました。

 「感想はたくさん来ていますよ。朝日新聞に広告を出し、そこにも読者の声は多数出ていたはずですが?」

 すると、のらりくらりと「たとえばどのような」などと聞いてくる。

 おたくの新聞に載せた広告なので自分で見てください、調べてください、と普通なら言うところですが、「のらりくらり感」にすでにそれも面倒になっていたので、朝日新聞に出稿した広告(2月2日)に掲載した「読者の声」を読み上げました。

 すると、「では、その『韓国がなぜあそこまで反日になるかよく分かりました』に(します)」と言う。

 「反日になるかよく分かった……、いや分かりました、ですか……」などと、ぶつぶつ言いながら。

 「取材」ともつかない「電話」で、「のらりくらり」して他人の時間を奪った挙げ句、確認のポイントがずれているので、この「先兵」大丈夫かなとは思いましたが、最後に「いつ、どこに載せる記事ですか? どのような記事ですか?」ともう一度確認しました。すると、

 「明日の朝刊の文化面に載ります。韓国や中国に関する本が売れているという記事で、そんなに角度のある記事ではないと思うんですけど(笑)。記事を読んでみてください(笑)」

 彼女は「ふふふ」と笑いながら、そう言って電話を切りました。

朝日が「憎韓」を捏造


 そして記事は、翌2月11日に掲載されました。出だしは次のようなものです。

〈「嫌中憎韓」が出版界のトレンドになりつつある。ベストセラーリストには韓国や中国を非難する作品が並び、週刊誌も両国を揶揄(やゆ)する見出しが目立つ〉

 いきなりの決めつけで始まり、その後も再度、こう書いています。

〈多くの書店が、こうした本を集めたコーナーを設け始めており、「嫌中憎韓」は出版物の一ジャンルとして確立しつつある〉

 しかし、そもそもこの記事に出てくる書籍は3点です。

〈今年に入ってから既に、新書・ノンフィクション部門の週刊ベストセラーリスト(トーハン)のトップ10には『呆韓論』『侮日論』『嘘だらけの日韓近現代史』の3冊が登場した。昨年の同時期には1冊もなかった〉

 見出しにも、先の引用部分にも「嫌中憎韓」という言葉が何度も出てきますが、弊社『呆韓論』をはじめ、この3冊は「憎韓」本ではありません。『呆韓論』の著者は、時事通信でソウル特派員も経験された室谷克実氏で、本書では主に韓国メディアが報じた記事を元に、韓国の国柄や反日の理由などについて書かれています。つまり、出典は韓国メディア自身です。

 まさか、大朝日の記者が本も読まずに記事を書いたのでしょうか。それとも、韓国の真の姿を書くことが「差別を助長する」と考えているのか。そう考えるほうが韓国を下に見ていて失礼じゃないですか。

 朝日新聞が韓国の本当の姿を報じて来なかったために、日本国民はなぜ韓国がここまで日本叩きを続けるのか「わからない」ので、弊社の書籍などを買ってくださっているのです。

 「憎韓」で事が足りるなら、誰もわざわざお金を払って苦労して本など読みません。

 私の知る限り、「憎韓」とタイトル周りに打った書籍はありません。朝日新聞こそが「憎韓」を連呼して定着させ、まるで日本中が「憎韓」であるかのように演出し、対立を煽っているわけです。

 この記事のどこが「角度のある記事ではない」のでしょうか。ひょっとして「角度がついている」ことも、もはやわからないのかもしれません。

 ともかく、守記者の取材ともつかぬ「電話」を受けて、弊社の書籍は「憎韓」本だとレッテル貼りをされたわけです。

「憎日」の記事はいいのか


 守記者は記事のなかで、週刊誌の見出しにも「中国」「韓国」「尖閣」「慰安婦」を掲げた記事が多いと号数を数え上げ、それは「売れるのでやめられない」からだと週刊誌記者に言わせています。

 しかし、朝日新聞が「本当のこと」「読者が知りたいこと」を書いてこなかったからこそ、週刊誌がそれを書いて売れているのではないでしょうか。

 そもそも、「尖閣」は新聞も報じている大問題ですし、「慰安婦」は朝日新聞自身も、〈韓国、元慰安婦の「記念日」検討 女性家族省が方針明示〉〈元慰安婦証言、「世界遺産」申請へ韓国政府が方針〉〈韓国政府が「慰安婦被害者展」 朴政権の姿勢をアピール〉と大喜びで報じています。

 また、朝日新聞デジタルでは「従軍慰安婦問題」というトピックスを立てて一覧で見られるようにしています。いまだ「従軍慰安婦」という言葉を使っている神経に驚きますが。

 朝日新聞が運営する「WEB新書」というデジタルの記事配信システムでは、「日韓関係」や「韓国」というジャンルがあり、そこには他社のものも含めてズラリと記事が並んでいます。

 日韓関係は日本人の関心事になっているので当然ですが、朝日新聞の韓国代弁記事はよくて、週刊誌の韓国批判記事がよくない理由はなんですか?

 そもそもこの記事は、韓国に関する本は「出してはいけない」「売れてはいけない」という前提でモノを言っているように思います。いや、朝日新聞も「従軍慰安婦」については続々報じていますから、朝日的でないものは「出してはいけない」ということなのでしょうか。お得意の「言論の自由」はどこへ行ったのか。私からすれば、特定秘密保護法よりも朝日新聞のほうが怖い。

 しかも、〈昨年秋ごろから日本を賛美する内容の本と並んで、韓国や中国を批判する内容の本が売れ始めた〉とも書いてあります。「日本を賛美する内容の本と並んで」という一文を入れているところからも意図が伺えます。「日本は自国を賛美し、他国を叩く嫌な国ですよ~、皆さん~」という呼びかけでしょう。

 では朝日新聞に聞きますが、「日本を貶める」記事は垂れ流されてもいいのでしょうか。「憎日」の記事や本は売れてもいいのですか。

 朝日新聞がレッテル貼りした韓国に関する三冊の書籍は、全部合わせても現在のところ30万4千部です。朝日新聞朝刊の公称部数は、現在760万部(朝日新聞 MEDIA DATA 2014)だそうで、毎日毎日配られています。

 先の社会学者、小宮さんに「ヘイトスピーチに荷担している」と言われた全国の書店員さんのなかの、ある方がツイッターでこうつぶやかれています。
〈自分と違う考え方の存在を認めること、民主主義だかリベラルだかの基本じゃなかったっけ。 RT 鍵「そんな本屋は潰れちまえ」という言葉は、「そんな奴は母国に帰れ」と同じベクトルじゃないですかね。極端な例ですが〉

読者を馬鹿にしている


 『呆韓論』を読まれた感想は様々で、「近くて遠い国が少し近くなった気がします(七十代)」「今や多くの日本人がこの本に共感すると思います。しかしそれでも韓国と仲良くしていきたい(五十代)」から、多数頂いている「世界に向かって翻訳出版すべき」「憤りを感じる」「呆れます」「もっと知らなければ」「表面のつき合いはごめんです」などのご意見まであります。

 また、「韓流ドラマ」に嵌っていたときから、ドラマに出てくる「外華内貧」に違和感を抱いていたという方もいらっしゃいます。

 守記者に教えてさしあげた「韓国がなぜあそこまで反日になるかよく分かった」というご意見も非常に多い。

 文面から共通して読み取れるのは、朝日新聞がことさら問題視する「右傾化」ではなく、「知りたい」ということです。読者は知って、どうつきあうか、様々に考えておられる。

 「朝日、毎日など新聞社説をもっともらしく書いている人に本書を読ませたい(六十代)」「永年『国際正義派』を気取っているいわゆる一流大新聞を購読していたので韓国の実情をよく知らなかった。本書で目が覚めたようによくわかった(八十代以上)」「日韓問題の本質的な部分を解説して頂き大変参考になった(六十代)」

 こういうご意見も非常に多い。朝日新聞は、日韓関係の本質が「ちっともわからない」記事を書いていると自覚したほうがいい。

 産経新聞出版書籍編集部のフェイスブックページに、守記者の振る舞いについて長いレポートを書いたところ、たくさんの方がコメントをくださいました。『呆韓論』を読んでくださった方は、「(朝日新聞の記事は)単なるブームということで終わらせようとしている」「馬鹿にされた気がします」と感想をくださいました。

 たしかに、「売れるから」韓国叩きをしている、ブームだから「買っている」と、私たちや読者を馬鹿にしていると思います。読者を馬鹿にされるのは黙っていられません。

 私は、この朝日新聞の記事を一読して、まるで以前、同じく『呆韓論』について書いた「中央日報」(〈【取材日記】嫌韓から呆韓まで〉二〇一三年十二月十七日)のごとく、自社の報道に反省のない記事だと感じました。

「従軍慰安婦」と同じ構図


 守記者の記事では、最後に慶応大の大石裕教授(ジャーナリズム論)が次のようにおっしゃっています。

〈週刊誌などだけがブームを作ったわけではない。メディアが日韓・日中の対立ばかりを報じ、日常的な交流のニュースを捨象してきたことも根本にある。報道全体の検証が必要だ〉

 しかし本来ならば、朝日新聞自身が、こう自社の報道を反省して締めくくっていただきたいところです。

〈週刊誌などだけがブームを作ったわけではない。朝日新聞が先頭に立って日韓・日中の対立ばかりを報じ、「従軍慰安婦」を捏造して問題化して対立を煽り、『いたずらに差別を助長する』と本質的な国柄の違いを報じてこなかったことが根本にある。報道全体の検証が必要だ〉

 これなら、この記事の意味があったのに、と残念です(笑)。

 まずは、慰安婦問題で煙もないところに火をつけ、煽りに煽った自らの虚報を謝罪してからモノを言っていただきたい。間違いは誰にでもありますから、謝ればいいではないですか。

 2月11日、この朝日新聞の記事が出て、すぐに韓国紙「ハンギョレ新聞」に、朝日を引用した記事が出ました。翌12日には、「ハンギョレ新聞日本版」に日本語訳でアップされました。同じく韓国紙「毎日経済新聞」にも引用されています。

 まさに、「従軍慰安婦」のときと同じ構図が目の前で繰り広げられて驚きます。朝日新聞が捏造し、火つけして、韓国の新聞に報じさせて問題化し、それを逆輸入して「問題になっている」と騒ぐ。公式どおりで怖いくらいです。

 日韓関係の「諸悪の根元」はまったく反省をしていないようですので、『呆朝論』を出版するか検討したいくらいです。読者の皆さんからは『憎朝論』にしたほうがいいとお叱りを受けそうですが(笑)、決して朝日新聞を憎んでいるわけではありませんので。(産経新聞出版書籍編集部編集長 瀬尾友子)
室谷克実 (著)
産経新聞出版
950円