過重労働が社会問題としてたびたび取り上げられているが、政府が唱える「働き方改革」が、働く人にとって有益なものとなっている気配はない。それどころか、経済界からの意見に押されて、強く規制することをためらう内容になっている。諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師が、これから、どんな働き方を目指すべきなのかについて考察する。
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 2015年のクリスマス、電通の新入社員だった高橋まつりさん(当時24歳)が女子寮4階から飛び降り自殺した。彼女は、月100時間以上の残業を日常的に行なっていたことが問題となった。

 生前のツイッターから過酷な働きぶりがうかがえる。自殺の2か月前には「体が震えるよ……しぬ」、1か月前には「がんばれると思ってたのに予想外に早くつぶれてしまって自己嫌悪だな」などと投稿していた。

 東京大学卒の頑張り屋。深夜帰宅が続き、「睡眠時間2時間」という日もあった。高橋さんの自殺は過重労働のためだったと労災認定された。電通は夜10時に消灯し、深夜の残業を防止。しかし、カフェで仕事をしたり、早朝出勤したりするなど長時間労働の実態は変わっていないという指摘もある。

 それにしても、1か月100時間以上の残業時間というのは尋常ではない。医療界はもっとひどい。20代の勤務医の労働時間は、平均週55時間。これに、当直や待機の時間が週12時間加わる。これを1か月に換算すると120時間を超える時間外労働をしていることになる。

こんな「ブラック」な状況下で、日本の医師は患者さんの命を預かっている。それでも、何とか続けられているのは、医師としての使命感や、自分が成長するプロセスを実感できるからだろう。患者さんが元気になり、「ありがとう」と感謝されることも、心の支えになっている。

 諏訪中央病院に医師が集まるのは、地方の中小病院なのに100名の医師がいて、他院より余裕が少しあるためかもしれない。高橋まつりさんのツイッターで長時間労働以上に気になるのは、上司から言われた言葉の数々だ。

「君の残業時間の20時間は、会社にとって無駄」「今の業務量でつらいのはキャパがなさ過ぎる」