西岡力(麗澤大学客員教授、「救う会」全国協議会会長)
ソウルの韓国大統領府で記者会見する
文在寅大統領=8月17日(共同)
ソウルの韓国大統領府で記者会見する 文在寅大統領=2017年8月(共同)

 文在寅韓国大統領が8月17日の記者会見で、日本統治時代に徴用されて働いた徴用工問題で、個人の賠償請求を認めた韓国裁判所の立場を支持する考えを示した。文氏は「(徴用工問題を解決した政府間の)両国合意は個人の権利を侵害できない。政府はその立場から歴史認識問題に臨んでいる」と語った。

 その後、安倍首相との電話会談で国家対国家の請求権処理は終わっているという立場を表明したというが、文在寅大統領発言は1965年に作られた日韓国交正常化の枠組みを根底から覆しかねない危険性を含んでいる。

 わが国政府は、徴用による労働動員は当時、日本国民だった朝鮮人に合法的に課されたものであって、不法なものではなかったと繰り返し主張している。しかし、それだけでは国際広報として全く不十分だ。

 韓国では映画『軍艦島』や新たに立てられた徴用工像などを使い、あたかも徴用工がナチスドイツのユダヤ人収容所のようなところで奴隷労働を強いられたかのような宣伝を活発に展開している。このままほっておくと、徴用工問題は第二の慰安婦問題となって虚偽宣伝でわが国の名誉がひどく傷つけられることになりかねない。官民が協力して当時の実態を事実に即して広報して、韓国側の虚偽宣伝に反論しなければならない。

 国家総動員法にもとづき朝鮮半島から内地(樺太など含む)への労働動員が始まったのは1939年である。同年9月~41年までは、指定された地域で業者が希望者を集めた「募集」形式、42年12月~44年8月まではその募集が朝鮮総督府の「斡旋(あっせん)」により行われ、44年9月に国民徴用令が適用された。なお、45年3月末には関釜連絡船がほとんど途絶えたので、6カ月あまりの適用に終わった。

 1960年代以降、日本国内の在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)や日本人左派学者がこれら全体を「強制連行」と呼び始め、彼らの立場からの調査が続けられてきた。韓国でもまず学界がその影響を受け、次第にマスコミが強制連行を報じるようになった。

 政府も盧武鉉政権時代の2004年に日帝強占下強制動員被害真相糾明委員会を設立した。ここで言われている「強制動員被害」とは、「満州事変から太平洋戦争に至る時期に日帝によって強制動員された軍人・軍属・労務者・慰安婦等の生活を強要された者がかぶった生命・身体・財産等の被害をいう」(日帝強占下強制動員被害真相糾明等に関する特別法)。同委員会は2010年に対日抗争期強制動員被害調査及び国外強制動員犠牲者等支援委員会となり、20万を超える被害申請について調査を実施した。