山岡鉄秀(AJCN代表)

 8月23日、ニューヨークに降り立つや否や、件(くだん)の韓流プロパガンダ映画『軍艦島』を見ることになった。7月にはブロードウェーのビルボードで派手なプロモーションを打ち、8月4日には米国とカナダの約40カ所で封切られたので、マンハッタン界隈(かいわい)の映画館で見られるだろうという思い付きだった。ところが、ホテルのコンシェルジュに聞くと、隣のクイーンズ地区まで行かなくてはならないという。クイーンズといえば「フラッシング」という韓国人街がある。そこでも午後と夕方の2回しか上映していない。
映画『軍艦島』のパンフレット
映画『軍艦島』のパンフレット
 要するに、封切り後3週間未満でニューヨークの中心部から消えて、韓国人が多い郊外で細々と上映されている、ということだ。興業的には失敗したことがはっきりわかる。約220億ウォン(約22億円)という巨額の製作費をかけ、韓流スターを動員したトンデモ映画『軍艦島』は、本国での封切り初日こそ97万人を超える史上最多の動員を記録したが、翌週からまさかの失速をし、いまや損益分岐点に届くかも怪しいという。何が韓国人をしらけさせたのだろうか。タクシーに30分も乗ってまで見る価値があるかという思いを振り払って、これも調査と自分に言い聞かせてクイーンズ地区へ向かった。

 本稿の目的は、この映画がいかに荒唐無稽かを詳述することではなく、日本人としてこの映画から何を読み取るべきかを解説することである。『軍艦島』は徴用工がテーマであるが、慰安婦も登場し、慰安婦問題を含む全ての歴史問題に通底する韓国人の被害者ファンタジーである「恨(ハン)タジー」と、悲しいまでの自己肯定願望があふれている。その現代韓国人のメンタリティこそ日本人がしっかりと理解しなくてはならない要諦であり、それを理解せずに彼の国と外交を行えば必ず失敗する。この映画はそういう観点からこそ見るべきものである。

 それにしても、ここまで荒唐無稽になるとほとんどギャグの世界だが、史実を極端に歪曲(わいきょく)すると、エンターテインメント映画にならざるを得なかったのだろう。映画評論家のジャスティン・チャンは、米紙ロサンゼルス・タイムズの映画批評欄で「この手の歴史修正主義は映画の世界では珍しくない。歴史をばかげた復讐(ふくしゅう)ファンタジーに仕立てあげる特権はクエンティン・タランティーノだけに許されるべきではない」(筆者訳)と書いている。つまり、歴史を知らない人間の目にさえ、「歴史捏造(ねつぞう)復讐ファンタジー」であることが明らかな出来栄えだということだ。

 映画館に入る前、チケット売りが「この映画にはコメディーの要素もあるんだ」と前の客に言っていたのが聞こえたが、人気俳優のファン・ジョンミンとキム・スアンが親子役で登場してその意味がわかった。娘を愛するジャズ楽団団長の父親と、楽団の歌手で小学生の娘がコミカルな人情劇を演じる。ふたりが連絡船で端島(軍艦島)に着くなり、軍人らが乗り込んできて、警棒で乗客を殴りつけて連行していく。ファン演じるイ・カンオクは「やめてください、やめてください」と日本語で懇願する。ばかげたシーンである。労働者を痛めつけてどうするのか。要は、端島の炭鉱で働く朝鮮人は全員が強制連行の被害者だったという印象操作がなされているわけだ。