こうした状況で登場したのが民主党である。民主党には、昔の社会党や今の民進党と比べて褒められる点がある。政権担当の意思を示した野党であったことだ。もともと民主党は、鳩山由紀夫と菅直人の二人から始まり、野党第二党、第一党の地位に登った。リーマンショックで自民党の腐敗と無能が頂点に達した麻生太郎政権の時、国民の怒りが頂点に達した。 

当確のバラをかざる鳩山由紀夫代表(左)と平野博文党役員室長=2009年8月31日(早坂洋祐撮影)
当確のバラをかざる鳩山由紀夫代表(左)
=2009年8月31日(早坂洋祐撮影)
 「鳩山民主党でもいいから、麻生自民党は嫌だ」

 その後の民主党三代の内閣の無能については、贅言(ぜいげん)を要すまい。今次安倍内閣は、「民主党よりマシ」という多数の国民の声が支えているという謙虚さを忘れてはなるまい。自民党の中にも心ある人はいて、「あの最悪の民主党の方がマシだと思わせた反省をしなければ、また同じ道を歩む」との危機感を持つ人はいる。だが、そのような良識派は少数派だ。むしろ、55年体制の再現の如く、「まさか民進党に政権を渡す訳にはいくまい。国民は自民党に投票するしかない」という驕り高ぶりが露骨だ。その民意が夏の都議選で示されたのだ。

 それを、民進党がスキャンダルで自滅し、安倍内閣の支持率が回復したからと、慌てて解散に打って出る。いいかげん、「民進党よりマシ」という発想から抜け出すべきではないのか。

 事前の報道では、安倍首相の解散理由は「増税の用途変更、北朝鮮対応、憲法改正」だと伝えられた。ところが9月25日の記者会見では改憲が外れた。さっそく腰砕けだ。公明党に遠慮でもしたか。自民党の憲法と安全保障を一手に担っていた高村正彦副総裁も引退する。まさか安倍内閣で中身がある憲法改正ができるなどと信じるのは、よほどおめでたい楽観論者だけだろう。内閣法制局と公明党が納得するような、「やらなければよかった改憲」なら、いざ知らず。

 北朝鮮対応に関しては、果たして争点になるのか。さすがに、いかなる政党も正面だって「北朝鮮に対応するな」とは言わない。具体的にどのような対応をするかで、差はあっても。もちろん、民進党や共産党が表立っては北朝鮮対応の総論に賛成しつつも、あらゆる各論に反対しサボタージュに近い行動をとってきたことは重々承知だ。

 しかし、日本国民とて愚かではない。マスコミが何を言おうが、これまですべての国政選挙で安倍自民党に多数を与えてきた。衆議院を解散するとは、その多数をかなぐり捨てることである。勝つかもしれないし、負けるかもしれない。やってみなければ、わからない。では、その代償に何を獲ようとしているのか。少なくとも、安倍首相は記者会見では何も言わなかった。

 この時期に賭けに出るならば、「核武装」くらい勝ち取らねば割に合わない。北朝鮮は、「日本列島を核で沈める」などと豪語している。この状況で我が国がNPT条約を脱退し、核武装に踏み切るのを批判する国際法的根拠は何か。誰も答えられまい。安全保障の問題ならば、言うに及ばず。