2017年09月29日 16:30 公開

マット・マグラス、環境担当編集委員

2011年3月の東日本大震災で発生した津波によって、大量の海洋生物が日本から太平洋を越えて米海岸に漂着していたという研究論文が、29日付の米科学誌サイエンスに掲載された。

様々な貝やヒトデ、ウミウシ、カニ、ハマグリ、イソギンチャクなど、少なくとも289種類の生物が日本から米海岸にたどりついたという。多くの場合、プラスチックごみなどに付着して太平洋を渡ったとみられる。2017年に入っても、さらに新しい種類の発見は続いているという。

研究チームは、これほど多くの生物が長距離移動を生き延びたことに驚いている。

東日本大震災による津波は、場所によっては約39メートルの高さに達した。巨大な波によって東北沿岸から、漁船や埠頭の一部といった大きなものから、細かいプラスチック片に至るまで、様々な物が海に流された。

研究者たちは地震の翌年から、生物が付着した津波漂着物をハワイや米西岸各地で発見するようになった。

論文の筆頭著者、米ウィリアムズカレッジ・ミスティックシーポートのジェイムズ・カールトン教授はBBCに対して、「何十万もの個体が運ばれ、北米やハワイ諸島に到着した。海洋漂着物に付いて漂着している現象が、従来は確認されていなかった種類がほとんどだ」と話した。

「流出したがれきの大半はまだ太平洋上にあり、今後も日本から生物が流れてくることもあり得る。2011年に行方不明になった小さい日本の漁船が、津波から10年後にどこかで発見されても、意外ではない」

特定された289種類以外にも、様々な種類の生物が米西岸にたどりついた可能性は高いという。日本からの外来種が新しい環境でコロニーを形成しているというデータはまだ得られていないが、あり得ることだと研究チームは言う。

共同執筆者のジョン・チャップマン・オレゴン州立大学教授は、「日本の生物がオレゴンにたどり着いていると最初に気づいた時は、衝撃的だった。これほど長い間、これほど厳しい環境で生きられるとは思っていなかった」と話す。

「オレゴンの海岸沿いで生活している日本の生物がほかにいても驚かない。むしろ、いなかったら、その方が驚きだ」

これほど多くの生物が太平洋を越えることができたのは、何よりプラスチックやガラス繊維など劣化しないごみが大量に海上を流れているからだと、調査に関わったすべての科学者は同意見だ。

「プラスチックの耐久性に比べれば、津波で流出した木材はそれほど長持ちしなかった」とカールトン教授は言う。

「はるか昔から植物や動物は海を渡っていたが、その『舟』は移動する最中にも足元から溶解していた。しかし今や人類は、決して腐らない『いかだ』を、動植物に与えたようなものだ。生物の移動手段の性質を人類が変えたというわけだ」

プラスチックやガラス繊維の破片は船舶と異なり、ゆっくり移動するため、付着した生物も環境の変化にゆっくり対応することができて、プラスチック片などに卵を産み付けることもできたと考えられる。

海に実に大量のプラスチックごみが漂流していることと、気候変動でサイクロンやハリケーンなどが激しさを増していることが合わさり、外来海洋生物の侵入による脅威はかつてないほど増していると研究チームは懸念する。2011年の津波による生物の移動から、この現象の影響力を推し量ることができた。

「海洋科学の歴史上、まったく前例のない規模の現象だ」とカールトン教授は強調する。

「何千キロもの移動距離、移動した種類のとんでもない多様性、移動が続いている年数など、すべてが異例だ。侵入外来種の拡散に海洋漂流物がどのような役割を果たすかを考える上で、まったく新しい展開だ」

(英語記事 Tsunami drives species 'army' across Pacific to US coast