東京都も独自の条例制定に乗り出すそうで、7月の都議選には都民ファーストの会と公明党が、罰則付きの受動喫煙防止条例を公約としてかかげた。幼児のいる家庭内も規制しようという提案が小池都知事の本拠地である豊島区議会に出ているが、「密告者」がいないと成り立たぬ話だろう。いずれにせよ、都が既存の区条例とすりあわせるのは容易ではあるまい。

 オリンピック開催に備えてというのが大義名分になっているが、屋外はセーフと思い込んで来日する選手や観光客にどう対応するのか。酷暑対策と並んで頭痛の種になるのではあるまいか。難点はまだある。
( iStock)
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煙漏れのない喫煙室


 厚労省は世界保健機関(WHO)から「煙漏(も)れのリスクがあるから喫煙室を設置せずに、屋内は100%禁煙化」の目標を罰則付きで達成するよう督励されている。しかも、先進49カ国がこの条件(病院、学校、飲食店などの公共的場所8カ所)を満たしているのに、努力義務ですませている日本の現状は世界最低レベルだときめつけられ、当惑した。喫煙室の設置を軸に「分煙先進国」の路線を歩んできたわが国に、急激な方向転換を強いることになるからだ。

 喫煙所の総数は不明だが、厚労省は2011年に「受動喫煙防止対策」の名目で、1件の上限を200万円として工事費の半額を負担する助成制度を作り、累計で1551件、30.9億円を交付してきた。

 東京都も一昨年から飲食店の分煙を支援する補助金制度を創設した。初年度予算は77施設、9億1000万円で、店頭表示用の「禁煙」「分煙」「喫煙可」のステッカーを無料配布している。「完全分煙」をめざす千代田区は、全額負担の屋内喫煙所を年に5店のペースで殖やしていく方針だ。ここで方向転換すると、自己負担を含め巨額の投資は無駄となり、喫煙室は取り壊されるに違いない。

 WHOの「要請」や厚労省の「たばこ白書(2016年8月)」で気になるのは「屋内は100%禁煙」のくだりである。およそ科学的、法的論議で100%という目標値はめったに見かけない。行政文書ならなおさらであろう。それをあえて打ち出すのは、0.01%でも煙が洩れたら不合格と判定するためのトリックではないかと、かんぐりたくもなってくる。

 そもそも厚労省は洩れ出る煙の有害物質と許容量を算定していない。副流煙よりも外の空気が汚れているとわかったら困るからだろう。

 次ページの図で示すように高性能の喫煙室だと、ドア下部のガラリから吸い込む空気は煙をふくむ気流を形成して換気扇から建物外へ排出され、急速に希釈されて上空へ散っていく。